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原子核発見100周年

先週、強盗に遭ってしまいまして、大変なんですが、それに付いてはまたあとで。

5月のうちに書かないと、という話なのでこちらを優先します。というか、強盗の件は、どうまとめれば良いのかまだ見当が付かないので…


なんで全然話題にならなかったんだろう、という話で、今月は、原子核発見の100周年でした。

1911年5月は、論文が発表された月で、学会での発表は3月だった、というのは理由かもしれません。でも、3月にもそういう話は無かったですよね…


とにかく、1911年5月に、ニュージーランド生まれの物理学者アーネスト・ラザフォードが、原子には、とても小さい核が存在するのでは、と考える事で、ある実験の結果を説明しました。どんな実験だったのか、という本題に入る前に、このラザフォードの発見以前に、原子がどのようなものと考えられていたのか、まずまとめます。


モノをどんどん分割していくと、これ以上分割できないモノに行き着く、という原子論が受け入れられるようになったのは、18、19世紀の化学の発展によってでした。その原子にも、さらに細かい部品があるらしい、と言うのが分かったのが19世紀の末です。ガスに電圧をかけると、飛び出してくるモノがある事が分かったんですね。

cathode ray

これが電子。発見したのはイギリスのJ.J.トムソンでした。

トムソンは、磁場によって電子が曲がるのを観察して、電子が負の電荷を持っている事、そして、原子全体の質量と比べて、電子は1000分の1の質量もない、という発見をしました。(注1)


原子全体には電荷が無いので、負の電荷を持つ電子と、正の電荷を持つなにかが一緒になって、原子を作っているはずです。そこでトムソンは、正の電荷を持った球体の中に、小さな電子が散りばめられてるんじゃないか、と言ったんですね。

これが、プラムプディングモデル、と呼ばれる説です。原子は、プラムの果実が散りばめられてるお菓子のようなものなんじゃないか、という事です。

plum pudding

電子が、原子全体と比べてとても軽い事が分かったので、場所を取っているのは正の電荷の方だろう、というのはごく自然な仮説でした。


このプラムプディングモデルの発表が1904年。これでは説明できない実験が現れるまでには、5年しかかかりませんでした。

当時は、ラジウムなどから発される放射線が発見されたばかりで、放射線とは何か、という研究が盛んに行われていました。キュリー夫人など有名ですね。ラザフォードも、放射線の研究で名を上げた学者で、放射線を出した原子が、別の元素になる事がある、と言う発見で1908年にノーベル化学賞を受賞していました。α線、β線、γ線の名付け親も彼。

プラムプディングモデルを覆したのは、この放射線の研究の一環で、α線を、物質にぶつけると、どういう事が起きるのか、という実験でした。


プラムプディングから予測されるのは、下の図。
plum pudding prediction

原子の正の電荷(ピンクの部分)には広がりがあるので、α線に大きな力を加える事はありません。α線も正の電荷を持っているので、他の正の電荷からは反発されるのですが、上にあるものには下に向かって押され、下にあるものには上に向かって押される、と言うように力が打ち消されてしまうからです。

さらにα線は、電子よりずっと重い、という事が知られていました。そこから予測できるのは、電子(水色)の近くを通っても、あまり曲げられる事はない、という事。つまり、プラムプディングの原子に、α線が大きく曲げられる事はない、という事です。


実際に実験をしたのは、ラザフォードの助手だったハンス・ガイガー(注2)と、学部生のアーネスト・マースデン。α線を金箔に当てて、その周りに、α線が当たると光るスクリーンを置いて、それを顕微鏡で眺めて光る回数を数える、という、すごい地味な実験です。観察する際には、まず暗闇に20分ほど入って目を慣らさないといけなかったとか。だから学部生を使ったのか、と思ってしまいますが…

その実験ではなんと、α線が金箔の手前に跳ね返される、という現象が見つかったんです。α線、2万本につき1回、という珍しさですが、大量のα線を使っていたので、十分に観測できる数でした。

ラザフォードは、ノーベル賞をすでに受賞していて、この後にも大発見にいくつか関わったのですが、この結果を聞いたときほど驚いた事は無かったと語っています。彼はこの実験を、「砲丸をティッシュペーパーに向かって打ち込んだら、跳ね返されて戻ってきたよう」、と表現しました。


こんな事が起きる理由は、原子の中の正の電荷は、大きく広がっているのではなく、小さな核に固まっている、と考えれば分かります。

nucleus prediction

大きな電荷と質量が小さな容量に固まった原子核があるとします。そんな原子核とα線が正面衝突すれば、α線が真後ろにはじき返される、というわけです。


というのが、主流のストーリーなんですが、実は、原子核説を唱えていた人はラザフォード以前にもいました。少なくともフランスのジャン・ペランと日本の長岡半太郎の2人。太陽系からの類推で、真ん中に核があって、その周りを電子が回っているんじゃないか、という発想だったのですが、実験からの証拠は得られず、2人ともガイガーとマースデンの実験以前に、この説を突き詰める事は諦めていたようです。

長岡の1904年の論文は、イギリスのPhilosophical Magazineという学術誌に載ったので、ラザフォードにも読まれていました。100年前のラザフォードの論文にも引用されています。


以上、ですが、あとでちょっと参考文献など書き足しますね。

(注1)ちなみに、ブラウン管のテレビは、電子を磁場で曲げる事で、画面のどこを照らすかコントロールしています。

(注2)ガイガーカウンターのガイガー。「助手」と書きましたが、実際の肩書きが何だったのかはすぐには分かりませんでした。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

アシュリー様
お久しぶりです。(ひ)です。実は現在再びカロライナに来ております。滞在は7月末までの予定です。
アサヒコムの記事を見て、99.93%と99.9999%にどのような違いがあるのか興味を持ちまして、とりあえずコメントしております(第5の力発見か、しかし否定される、のような記事です)(我々生物系のなんちゃって研究者には考えも及びません)。
強盗、とはただ事ではないと思いますが、大丈夫ですか?ブログが更新されているということは、ご存命ということなので、とりあえず安心してよいのでしょうか?
では、失礼します。(ひ)

(ひ)さん

お久しぶりです。実は同僚が、今チャペルヒルに2週間滞在中ですが…あまり関係ないですね(笑)

素粒子系の実験が要求する精密性はすこし特別だと思いますが、生物系でも、サンプルが少ないためにfalse positiveが出てしまうような事は、よくあるのではないでしょうか。今回のような場合は、膨大なデータの中から、とんでもなく珍しい現象を見つけようとしているので、フライングも時々あるようです。

強盗の話は、やはり少し書いておいた方が良さそうですね。もう1ヶ月前の話になりますが、大きな怪我などはありませんでした。取られたものが大きかったので大変という事です…

No title

アシュリー様
チャペルヒルのUNCキャンパスにも何度か行きました。
相変わらずとてもきれいなキャンパスで、羨ましく思います。
スミスセンターの隣にある、ターヒールズのミュージアムにも行きました。

なるほど。大規模な実験も仮説があって成り立つので、実験の意義を示すためにも、仮説を支持するデータはついハイライトしたくなるのでしょうね。それにしても、99.93%正しければ普通は正しそうなものですけどね。まるで哲学のようですね。

カロライナ滞在も折り返し点を過ぎました。
スポーツが盛んな時期でないのが残念ですが(野球のCWSも敗退しましたし)、もう少し「帰省」を楽しみます。
(ひ)

(ひ)さん

「99.93%正しい」というのは、少し違います。

「99.93%」の意味は、例えば第5の力の話でいくと、「第5の力がなかった場合、99.93%の確率でこの結果は出ない」という事です。つまり、第5の力が無くても、0.07%の確率でまぐれでそういった結果が出るということです。

ここで問題なのは、TevatronやLHCのような大規模な衝突実験では、膨大なデータの中から興味のある部分だけ選んで、特定の現象を探してみる、という解析を大量にやっている事です。0.07%の確率で、まぐれで出てくるような結果というのは、何百、何千の違った解析をすれば、1度くらい出てきてもおかしくないわけです。

コインを投げて、10回続けて表が出たら不思議に思いますが、毎朝10回投げる、というのを1年続けたら、1回くらい起こってもおかしくない、というような話です。
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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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