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放射線・放射能の基礎

(まず広報:はてなダイアリー始めました。今のところ、放射線関係の、ちょっと専門的な話しかありません。こっちのブログは、ゆるめの話専用で使い続けようと思います。ゆるめ、と言っても、僕の場合は学術的過ぎない話、と言う意味…いや、読者の方なら分かりますよね。)


原発からだけでなく、食品や水道水の検査結果など、不安なニュースが続き、大丈夫なんだろうか、と、とにかく心配な方も多いと思います。自分は大丈夫でも、周りに、パニック状態になっている人がいる、という場合もあるでしょう。

いずれにしても、正しい情報を得て、それを元に判断する、というのがとても大事だと思います。放射線の、ほの字も分からない、というような人のため、または、そういう人に説明したい人のための記事を書こうと思います。上手く出来るかどうかは疑問…

基本の基本は分かっている、という人のためには、他にリソースが沢山あります。多分、一番のお勧めは、放射線医学総合研究所。電話のホットラインもあるようです。Twitterでは、測定データ等は早野教授。医療関係は、チーム中川(チーム中川は、主にブログで発信することになったようです。)。


僕は日頃から、科学には、用語を言っただけで恐がられる、3つのモノがあると言ってます。生物学では「微生物」、化学では「化学物質」(笑)、物理学では「放射線」。どれも、危険なものもあるのは確かなんですが、人間が生きて行くために必要不可欠なものもあります。大事なのは、しっかりとした知識を持つことです。

この3つに(大体)共通するのは、目に見えない事。見えない恐怖、と言うのは、人間の心理深くにあるんでしょう。まずは、放射線と、放射能物質のイメージから始めようと思います。


放射線は、とても大雑把に言うと、さえぎられなければ真っ直ぐ進むとても小さい粒子、です。そういう粒子を、ひとりでに吐き出すものがあって、これが、放射性物質。(注1)

放射性物質を作り上げている原子も、有害な放射線も、肉眼では見えませんが、もし、目に見えたとすると、どうなるでしょうか?物理学者の、前野教授が、こんなページを作ってくれました。

このページで分かるのは、まず、1つ1つの原子核は、1回ずつしか放射線を出さない事。これは、放射線を出すと、別の物質に変わるからです(注2)。時間が経つに連れて、放射性物質の量は減っていって、同じ塊から出てくる放射線の量も、減って行きます。よく出てくる、半減期、と言うのは、元々あった放射性物質が、半分の量になる時間です。


次に、なんで放射線が危険になる事があるのか。

それは、素早く動いている粒子が、体の中にある物質に当たると、当たった分子を分解してしまう事があるからです。

もし、一度に大量に放射線を浴びた場合、大量の分子が分解され、細胞がいつも通りに働かなくなってしまいます。これが、原爆などで、大量の放射線にさらされた人の症状の元です。被曝の「確定的影響」、というのはこれです。今回の原発事故では、一般市民にこういった事が起きる可能性は、まず無いです。原発の作業員の方でも、しっかりと管理がされていれば起こりません。(残念ながら、起こってしまったようですが…)

今回、一般人が心配しないといけないのは、「確率的影響」と言われる物です。放射線が、DNAに当たった場合、突然変異が起こる事があります。この突然変異のために、普段なら、増殖しすぎないような仕組みが働いている細胞が、一気に増殖してしまう場合があります。これが、癌。つまり、放射線を浴びると、癌になる可能性が高くなる、という事です。

1つ良くある誤解について。放射線に一度当たった、という事だけである物が危険になる事はありません。例えば、水にいくら放射線を当てても、危険物にはなりません。放射線はただ通り過ぎるか、水に吸収されるかで、水の中に放射線が残ったり、水を放射性物質に変えたりはしないからです。放射線は、伝染りません、と言い換えてもいいでしょうか。

危険なのはあくまで、放射性物質と、そこから直接出てくる放射線です。


ここで、単位について。聞いた事の無い単位ばっかり出てきて、大変ですよね。

ベクレル、と言うのは、大雑把に言うと、1秒に、どれだけの数の放射線が出てくるか(注3)。これが、放射能の強さ、です。上のリンクを見ると分かったと思いますが、最初の頃は、1秒の間にいくつも放射線が出てきているのが、最後の方は、1秒に1回も出てこなくなります。最初は数ベクレルの放射能があるのが、時間が経つに連れて、放射能が弱くなっていくわけです。半減期を変えるとどうなるかも、上のページで試してみて下さい。

水や野菜の測定では、1kgあたりのベクレル(Bq/kg)、つまり、1kgあったとして、その中から、1秒あたり何回放射線が出てきてるのか、という単位が使われてますね。

東京の水道水で出てきた、210Bq/kgと言うのは、1リットル(1kg)の水から、1秒に210本、放射線が出てきてる、と言う意味。ちょっと考えてみると、この水が5ccあると、1秒に1本、放射線が出てくる、という事でもあります。1秒に210回はイメージしづらかったら、こっちでイメージしてみて下さい。


シーベルト、と言うのは、放射線を受けて、体の中の組織がどれだけのエネルギーを吸収したかを測る単位です。これまた大雑把ですが(注4)。体への影響を測るのが、シーベルト

ミリシーベルトは、1000分の1、マイクロシーベルトは、100万分の1、です。気を付けないといけないのが、各地の放射線の計測、という時に出てくるのは、「毎時」シーベルト(シーベルト/時とも)だという事。1時間そこにいると、これだけ放射線の影響を受けるよ、という意味です。

同じ放射能(ベクレル)を持った物質でも、遠くにあれば、体に当たる放射線の数が少ないので、体への影響(シーベルト)は小さくなります。体への影響が一番大きくなってしまうのは、放射性物質を体内に取り込んだ場合。これは、中と外で影響が違う、という事ではなくて、中にあると、放射線が体に一番当たりやすいから、です。


…長くなりましたね。「だから、安全なの?危険なの?」と聞きたい人がいるんじゃないかと思います。今から、どれくらいまでなら安全なのか、目安を答えていきます。でも、ここまでの前置きは、必要だと思います。状況が変わった時に、あなた自身でいくらか判断できるように。少し厳しい言い方かもしれませんが、必要以上に不安になるのは、最初から最後まで他人任せな人です。

以下の計算は、桁さえ合っていれば、と言う計算です。心配性な人は、僕が書いた目安の半分くらいを目安にする、というようなのもありです。


というわけで、放射線を浴びると、どれくらい癌になりやすくなるのか。

まず、放射線を浴びなくても、日本人の半分くらいは癌になります(注5)。放射線を浴びると、このベースラインより、さらに癌になる可能性が上乗せされるわけです。

どれくらい癌になりやすくなるかというと、0.1シーベルト(100ミリシーベルト、10万マイクロシーベルト)被曝するごとに、約1%、癌になる可能性が上がります(注6)。

人それぞれの、リスクに対する考え方の違いもあるので、一概には言えませんが、0.01%は、万に一回、あまり大きな確率ではない、と思ってもらえるのではないかと思います。この記事では、0.01%増えるくらいなら、安全と言っていい事とします

癌になる可能性が0.01%上がるのは、1ミリシーベルトの被曝。被曝量が、ミリシーベルト単位から上になると、危険になってくる、と考えて良いです。ちなみに、人間が浴びている、自然にある放射線の世界平均は、年に2.4ミリシーベルト。短い間に、何年分、何十年分と浴びると、危なくなってくる、という事ですね。


じゃあ、実際に、今のところ計られている、屋外での放射線の量で、どれくらいの危険があるのか。まず、0.2マイクロシーベルト/時くらい0.1マイクロシーベルト弱が、自然にある放射線です。(これを1年浴び続けて、約2ミリシーベルト1ミリシーベルト弱の被曝で、他にも室内にあるラドンを吸い込む事などで、被曝しています。日本のケース。)


以下、各自、確かめてください。

もし、測定数値が、数マイクロシーベルト/時になると、1ヶ月浴び続けて、ミリシーベルト単位。

数十マイクロシーベルト/時になると、数日でミリシーベルト単位。


現時点では、原発の20kmくらいの所では、数十マイクロシーベルト/時になっている場所もあるようです。屋内にいれば、建物が、放射線をある程度さえぎってくれるので、屋内では、数マイクロシーベルト/時の被曝のはずです。

福島県の外では、茨城で、通常の数倍の数値が出ているようですが、それはつまり、何ヶ月かずっと外にいれば、1年分の放射線を受けて、0.01%ほど、癌になる確率が高くなる、という事です。今後、大量の放射性物質がまた原発から出てしまうことが無ければ、この放射線の量は心配する程ではないと思います。(これはあくまで、僕個人の判断。)


原発のすぐ近く以外では、水や食べ物から、放射性物質を体内に取り込んでしまう事で起こる、内部被曝の方が心配です。特に、甲状腺に溜まるヨウ素の、放射性を持ったヨウ素131が危険視されていますね。甲状腺に集中的に放射線が当たるので、甲状腺ガンに罹る可能性が上がるんです。他には、セシウム137、ストロンチウム90などが、こういった事故の際、注意しなければならない放射性物質です。

じゃあ、何ベクレルくらいの、放射性物質を体内に取り込んでしまうと、危ないのか。1ベクレルにつき、何シーベルトの被曝をするのか、まとめた表があります。(リンク)これを目安として、また大雑把な計算をします。

ヨウ素131(I-131)、ストロンチウム90(Sr-90)、セシウム137(Cs-137)の3つを見るとどれも、1ベクレル飲み込むごとに、0.01マイクロシーベルト単位の被曝をするとなっています。(注7,8)

危険になり始める約1ミリシーベルトに達するには、約10万ベクレル、これらの放射性物質を取り込まないといけません。この10万ベクレルというのは、この3つ以外の放射性物質が大量に出てこなければ、使えるので、覚えておいていいのではないかと思います

水道水の、1kgあたり200ベクレル、というのは、まず問題ないと思います。50リットル飲んでも、1万ベクレルです。用心するに越した事はないですが、心配し過ぎないよう。

1kgあたり1000ベクレルなどの数字が出ている野菜も、食べたらアウト、というような物ではないのは、分かってもらえるでしょうか。各自、どれくらいの量を食べているのか、考えて、判断してください。


危険になり始めるラインについて、まとめますね。

放射線の被曝が、ミリシーベルト単位になると、危険になり始める。

食べ物、飲み物から、10万ベクレル単位の放射能を体内に取り入れると、危険になり始める。(ヨウ素、セシウム、ストロンチウム以外の汚染が話題になると、更新する必要があるかもしれない)

どちらも、上に説明したように、厳密なものではありません。どれくらいのリスクなら受け入れられるのかは、最終的には個人の判断ですから。


以上、おおまかな目安の話ですが、少しでも、心配を和らげる事が出来れば、と思って書きました。質問があれば、コメント欄でも、ページ左側のメールフォームでもどうぞ。出来る限り答えます。僕の専門分野は、原子核物理なので、放射線自体の性質に付いては、もっと詳しく話せます。医療関係は、門外漢なので、基礎的な部分以外は答えられるかどうか保証できません。

もし、間違いがあった場合は、コメントですぐに教えてください。とても大雑把な話をしましたが、間違った情報は流していないつもりです。


(注1)放射線の種類については、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子、など、興味があったら質問、または他で調べてみてください。この記事は、大雑把な話だけです。

(注2)場合によっては、変わった後も放射性物質だったりもするんですが、本筋からそれるので、割愛。

(注3)本当は、1秒毎に起こる、崩壊の数。一度に複数の放射線を発する物質もあるので、放射線の数は、崩壊の数よりちょっと多い。だから、大雑把。

(注4)同じエネルギーでも、アルファ線や中性子は、ガンマ線などよりさらに悪影響を及ぼすことが分かっています。シーベルトという単位は、これも考慮に入れて、補正してあります。単純なエネルギーの吸収量の場合は、グレイという単位。

(注5)「元々半分だから、ちょっと増えても関係ない」、なんて事は僕は言ってませんし、思ってもいませんよ。事実をそのまま述べてるだけです。

(注6)大雑把な話です。もっと正確な数字は、チーム中川のブログなどにあります。

(注7)リンク先の、10^-8と言うのは、10の-8乗、0.00000001(0が8つ。1億分の1)の事です。0.00000001シーベルト=0.01マイクロシーベルト。

(注8)ストロンチウム90の場合、空気中にあるものを吸い込む方が、同じ放射能での被曝量が大きくなるようですが、一般的に、食べ物などに付いている場合の方が、空気中よりも濃度は格段に高いはずです。

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

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ヨウ素131

ヨウ素131が、甲状腺に溜まった場合の線量は、局所的なので計算を変えなければならないのでは?と思ったのですが、放医研のページに、10万ベクレルほど摂取しないと、甲状腺癌のリスク上昇は見られない、とありました。ふぅ。

http://www.nirs.go.jp/data/pdf/iodine.pdf
(マイクロキュリー=37000ベクレルです)

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No title

返答が少し遅れてすいません。

まず、この場合におもちゃが汚染される可能性というのは、宅配便に付いていた土などが汚染されていて、それがおもちゃに付いた、というものですね。記事内でも書いたように、近くにあったから、というだけで「伝染る」ものではなく、放射性物質が移動する必要があります。

ハッキリとした数値は、測ってみないとわかりませんが、推定する事は出来ます。

文科省が発表した、土壌汚染の地図がこちらにあります。
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/ (「文部科学省による放射線量等分布マップ(放射性セシウムの土壌濃度マップ)の作成について(平成23年8月30日)」)。これはPDFですが、タイトルで検索すれば地図の画像も出てくるはずです。

福島市のセシウム134とセシウム137は、一番高いところでそれぞれが1平方メートルにつき30万~60万ベクレルの水色になっています。最悪のケースを考えて、セシウム134とセシウム137が1平方メートルにつき60万ベクレルずつ、つまり合計120万ベクレル含まれた土が、宅配便に付いていたとします。

この土がどれくらい付着していると、どれくらいの放射能を持っているのか、というのを知るには、平方メートル当たりのベクレル数から、kg当たりのベクレル数に換算します。換算するには、65で割ります(http://twitter.com/hayano/status/67187441043382274)。

1平方メートルにつき120万ベクレル→1kgにつき120万÷65=約2万ベクレル、という事です。1gあたり約20ベクレルですね。

宅配便に付いていた土などが、1gもおもちゃに付く、というのはあまりはなさそうです(沢山付いたと考えられる事情がなければ)。なので、かなり多く見積もって、吸い込んだセシウムの量は20ベクレル、本当はもっと少ないように思います。

出来る限り被曝量は減らしたいので、注意するに越したことはないです。ただこの場合は、食べ物の心配の方が優先したほうが良さそうです。野菜や肉に含まれる放射性セシウムの基準値は、1kg当たり500ベクレルなので。

ちなみに、ストロンチウム90は、今回の事故ではセシウム134、137ほど放出されていません。現時点ではまずセシウムの心配をする事になります。
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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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