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選挙ゲーム

まず最初に、この記事は政治、選挙というプロセスについての学者的な興味から書いています。Twitterでも但し書きをしたんですが、今回の参議院選挙は在外投票し損ねましたし、この政党が絶対に良い、というような強い希望は持っていないので、結果について文句が言いたいとかいう話ではありません。

なので、できるだけ一般論になるようにしています。抽象的な話が苦手な人にはあまりオススメしません。


前回は、前提から全部疑ってかかろう、という話でしたが、今回はいくつかまず前提を決めてしまいます。

まず、民意を反映するのは良い事で、選挙の目的は出来るだけ正確に民意を反映する事だとします。

民意というのはこういうふうに定義します。有権者それぞれ、政党・候補者の評価を持っています(分かりやすく10点満点の評価としてもいいです)。この情報全てを、有権者全てについて集めた集合を、「民意」と呼びます。普通の意味での「1つのモノ」では無いのに注意。

民意をより正確に反映する、と言うのは、集められた情報の出来るだけ多くが、捨てられる事なく選挙結果に影響を及ぼす、という事とします。(少しグレーエリアがあるんですが、今回無視します)


まず、有権者1人が、実際の(日本の)選挙制度で投票する場合、どういった意見を1票に反映させているのか考えてみましょう。

前回の、kashさんのコメントへの返事で書いた事を少し言い換えます。投票する人が、投票する事で達成しようとしているのは、
1.自分の望んでいる選挙結果になる確率を高める(厳密に言うと、満足度の期待値を最大化する)
2.結果と関係なく、政治について自分の意見を表明する
という2つの事です。どちらかだけの人もいます。

まずは、単純な2番から。

自分の意見を表明する、という事だけが目的だとすると、投票する際に考慮しているのは、選挙区でどの候補が一番望ましいか、比例代表でどの政党が一番望ましいか、という情報だけです。


1番の場合は、もう少し複雑な判断が必要になります。

例えば、1人枠の選挙区の候補に、とても良いと思う人(Aさん)がいたとします。ですが、Aさんは世論調査では5%ほどの支持しか得ていません。当選する確率があるのは、他の候補2人(Bさん、Cさん)だけと見られています。選挙結果を自分にとってより好ましい方向に向かわせたい場合、Aさんに投票するのは賢明でしょうか?答えはNo、です。Aさんに投票してもしなくても、落選することはほぼ確実ですから。

この場合に考慮するべきなのは、BさんとCさんの間でどちらの方が良いのか。Aさんが一番いい、という事は票には現れません。

このように、結果を求めるために一番好ましいと考える選択をあえて避けるのを、戦略投票、といいます。今回の話の前提から言うと、出来れば無くなるようにしたい行動です。(情報が票に現れることもなく捨てられてしまうので)

比例代表の場合は、1票増えればその党の議席が増える確率が確かに増えるわけで(1議席も貰えないような政党でなければ)、この問題は大体のところ回避されます。大体のケースでは、死票が多い投票方式の方が、戦略投票をする人が増えます。選挙結果と関係無い選択肢が多いので、一番良いと思っていても避けないといけない、という人が多いわけです。


というわけで、Bさんがこの選挙区で当選した場合に反映された意見というのは、
1.Bさんが一番好ましい
2.BさんとCさんの間だと、Bさんの方がいい
という2つの意見です。

ここで気付いて欲しいのは、
1.誰が一番好ましいか
2.有力候補の間で誰が一番好ましいか
という2つの情報以外は全く票に反映されないという事です。


つまり、この候補・政党は絶対に嫌だ、というような積極的にネガティブな評価は、現行制度の選挙ではあまり結果に反映されないと言えます。大抵の場合、嫌っている人が多いということは、好んでいる人が少ないですから、これはあまり問題ではありません。

ですが、必ずしもそうとは言えません。例えば、有権者の30%は熱烈にサポートしているけれど、他の70%は絶対に嫌だと思っている候補がいた場合、単なる多数決では当選する可能性が十分あります。


どうやったら、有権者が望んでいない結果、というのを結果により反映できるようになるでしょうか。単純な多数決ではないので少し分かりづらい、というデメリットはありますが、解決策はあります。それは、候補の順位を投票する、選考投票というシステム。候補に、1番、2番、と好ましい順に順位を付けたものを投票するんですね。

順位を集計して、勝者を決める方式にはいくつかありますが、それなりに単純だと思われるのはinstant runoff voting(IRV)というもの。(Wikipedia

まず、候補それぞれが1位に指名された数を比較して、一番人気のなかった候補(Dさん)が落選します。ここで大事なのは、Dさんに入った票はまだ無効にはなりません。この票で2位に選ばれていた候補が、繰り上がりで1位の評価になるんです。

この繰り上げを行ったあと、また1位に指名された数を比較して、最下位の候補を除外。その人を選んでいた票は、次の順位に選んだ候補の票に。という風に繰り返して、最後に1人残った人が当選、という仕組みです。

…これだけで分かりづらかったら質問してください。


IRV方式の場合、30%の人が熱烈にサポートしているけれど、70%には嫌われている候補はどうなるでしょうか?

この候補は1位票が30%もあるので、除外されずに残り2、3人の所までは確実に進みます。でも、70%の票では、この候補は一番下にランクされています。という事は、残り2人の最終決戦の時に70%対30%で確実に負けるんです。


この投票方式は、戦略投票を避ける方策にもなります。

単純多数決の選挙では、Cさんが一番好きだけど、当選しないと思うから入れない、と言う人が出る話をしました。選考投票の場合、当選する確率が低くても、Cさんを1位にして損はありません。Cさんが当選しなくても、繰り上がりで次に良い人の票、その次に良い人の票、として効くので、死票にならないんです。


この制度がいきなり日本の国政で導入される可能性は小さいと思いますが、メリット・デメリットを考慮するだけの価値はあると思います。どうでしょうか?Wikipediaの記事を見れば分かるように、海外には導入されている場所がいくつかあります。

テーマ : 選挙
ジャンル : 政治・経済

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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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