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(続き)SF的ネタ

「地球を改造して、宇宙船にすることは出来るんですか?」
という質問への、自分なりの答えです。まずは、物理的にどういうハードルを超えないといけないのか。

質問をもう少し厳密にしておくと、「地球を改造して」というのは、地球の質量のほとんどを動かすと言うこと。半分以上、としてもいいです。難しさはあまり変わらないはずなので。「宇宙船にする」というのは、太陽の重力圏の外に出られると言うこと。(これは物理学的にはちょっと厳密さがまだ足りませんが、いいとします)


最初に、どれくらいのエネルギーが必要なのか。

重力の問題を考えるとき、高さに置き換えて考えると分かりやすくなります。
gravitational potential
↑の図は、天体の周りの重力ポテンシャルの大きさを表したもの。例えば真ん中にあるのが太陽だとすると、物体を止まった状態でどこかに置くと、太陽に向かって落ちて行ってしまいます。

地球などの惑星は、ぐるぐると回る遠心力のおかげで、真ん中まで落ちないでいられる、というわけ。

地球の動く速さを上げると、もう少し高いところ、つまり太陽からもっと遠い軌道で回れることになります。そしてさらに速さを上げると、外の平らなところまで行けます。これが目標。


元々軌道を回っていた物が重力圏の外に辿り着くためには、運動エネルギーを2倍にしないといけない、というのが物理学では昔から知られています。(ビリアル定理、素人向けではないです)

運動エネルギーは、
blog.jpg
質量mに、速度vの2乗を掛けて、2で割ればいいんですね。

地球の質量は6×1024kg。太陽の周りを回る速度は、秒速30km。これを代入すると、
blog2.jpg
34桁のすごい数字が出てきました。ジュール(J)という単位にどれくらい馴染みがあるのか分からないんですが、1ワットというのは、1秒につき1ジュールのエネルギーを使う、という意味です。

今の地球上の発電所を全部合わせると、約15テラワット(15×1012 W)の電力が作られています。これを全部地球を動かすのに回しても、太陽系の外に出るには数兆年かかります。宇宙が生まれて138億年と考えられていますから、その10倍以上かかるんですね。

…無理そう。

でもこれは、今の技術でやろうとした場合。将来、もっとずっと効率を良くエネルギーを使えるようになっているとすれば、一概に無理とは言えません。


もう1つのハードルは、運動量。上に書いた量のエネルギーを使っても、地球を動かしたい方向に推し進めるように使わないと、無駄になってしまいます。

地球を推し進める仕組みとしては、基本的には今も使われているロケットの原理が一番良いのではないかと思います。進行方向の反対側に向かって物質を放出して、その反動で地球本体を前に進めるんです。(地球の外はほぼ真空なので、空気をかいて進むプロペラなどの仕組みは論外です)

これは、運動量の保存を利用した仕組みです。噴射する前の、地球+燃料の運動量は、噴射した後の、地球+燃料の運動量と一緒。
uesc_03_img0155_20100513031146.jpg
燃料が後ろに向かって飛んで行っている場合、その燃料の後ろ向きの運動量の大きさの分、地球の運動量が前向きに大きくなるんです。

運動量は、質量×速度。より多くの質量を、より速く後ろ向きに噴射出来れば、地球の速度を大きく変えられる、という事。


じゃあ、地球の運動量を、太陽系の外に出られるだけの大きさにしようとすると、どれくらいの燃料を、どれくらいの速さで噴射しないといけないんでしょうか。

燃料が、地球の1%、100分の1の質量を持っているとすると、地球の100倍の速度で噴射しないといけません。上に書いたように、地球の速度は秒速30kmなので、燃料の速度は秒速3000km。光速の100分の1です。(相対性理論はまだ大きく効いてこない速度です)

これまた、すごい数字ですね。10秒くらいで地球を一周できる速さです。

さらに問題なのが、この秒速3000kmというのは、燃料が大気圏の外に出てからの速度だという事。燃料を、地表から上に向かって秒速3000kmで噴射しても、空気との摩擦で相当遅くなってしまうはず。大気自体への影響も良いものではないでしょう(苦笑)一番無駄がないのは、10kmほどの長さのダクトを宇宙に向かって取り付けることかも知れません。(秒速3000kmで大量の物が通り抜けても大丈夫なダクトかぁ…)


とにかく、今の技術とは比べ物にならないものが必要なのは確かそうです。でも、いくつかのアイディアや、抜け道のようなものも考えてみました。長くなったのでそれは次回。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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(完結編?)SF的ネタ

ネタにマジレス的な感じもする「宇宙船地球号」の話。でも、ショートショートが書けそうな気がしてきたからいいのかな(笑)続きです。(前...

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No title

宇宙船地球号は環境の保持が大変そうです。
太陽から離れたところでは地下に潜って地熱で暖を取るとか、何らかの地球規模の発熱装置が必要だと思います。
SF、と聞いてこちら方面の話かと思いました。

adbmalさん

鋭いツッコミが入っちゃいました(笑)

外に出た後の環境の維持についても考えていたんですが、動かす時点で大問題なので、そっちにまずは専念して書きました。

No title

E=mc2 を使って効率よく質量をエネルギーに変えられたら、、、
って長崎の住民が言うことではないですかね。(ひ)

(ひ)さん

種をもう1つ明かされてしまいました(笑)みんな鋭いなぁ。

お天道様が光っているのも核反応のおかげです。現に私たちに生命を与えてくれているものを、破壊力も持っているというからダメ、とハナから言ってしまうのはおかしな話だと思います。
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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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