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世紀の大発見?

ここまで、CDMSという実験が、どうやってダークマター候補のWIMPという粒子を探知しようとしているのか書いてきました。(前回

果たしてどういう結果がでたのか、去年の12月に発表された話を今回します。


音とイオン化を同時に測るCDMSの探知機でどういった事が起これば、WIMPを観測したと思われるのか、前回のまとめをもう1度書いておきます。

探知機の内部で起こった、イオン化の信号が小さ目の衝突、が見つかれば、WIMPの衝突だと思われる


CDMSは、以前写真を載せた探知機を30個、ミネソタ州スーダンの廃坑に設置しました。2006年に始まって、約600kg日、装置が作動していたとのこと。(探知機のターゲットの質量と、走らせていた時間を掛け合わせたものです。作業量を表す際に、「人時」などというのと同じようなものです)

30の探知機が、音とイオン化をピックアップした回数は膨大なものです。

Blind
点1つ1つが、探知機に引っかかった衝突。

このグラフの横軸は、衝突の際に伝わったエネルギーの大きさで、縦軸は、イオン化の信号の強さです。

隠されている部分が、WIMPの衝突が入ると思われる部分。イオン化の信号の弱いところです。


こういった、大量のノイズを取り除く事が必要な実験で大事なのは、ノイズを取り除き終わるまで、欲しいデータの部分を見ない事です。なぜかというと、欲しいデータの部分がどうなっているのか分かっている場合、ノイズを取り除く条件を微調整して、欲しい結果を得る事が可能かもしれないからです。

実験をしている人達は当然、WIMPを発見したくてしたくてしょうがないわけです。そういう人達が、WIMPの衝突があるかもしれない部分のデータを見ながら、「これはノイズだけど、これはノイズじゃない」というのをやってしまうと、本当はWIMPの証拠が無いのに、ある、という結論を発表してしまうかもしれない。こういったバイアスを避けないといけないんですね。さらに言うと、バイアスを疑われるような事もしないように心がけないといけません。


CDMSでも、こういった、「ブラインド」での分析が行われました。

ノイズとして除去されたのは、探知機の中で2回衝突を起こしたと思われるものや(WIMPはほとんど反応しないはずで、同じ探知機の中で2回衝突する可能性は極端に低いので)、表面近くで起こったと思われる衝突などです。

隠れていない部分のデータから、出来るだけノイズを除去した後も、WIMPではない衝突がいくらか残っている事が分かりました。そして、もしWIMPの衝突が無くても、平均して0.6回の衝突が、隠された部分に残っている、つまり、WIMPの衝突のように見えてしまう、というのが、分析の結果でした。


ということは、隠れた部分を開けてみて、1個衝突があるかないか、と言うのは、WIMPとの衝突が観測出来なかった場合。逆にもし、5、6回も衝突があったのなら、これはWIMPの衝突があったという強い証拠になります。

実際の結果はと言うと…


Result

2つ、WIMPの衝突のようなものが観測されたんです。

これは、相当微妙な所です。

WIMPがなかったとしても、WIMPの衝突のようなものが2回以上観測される確率は、23%あるんだそうです。だから、2つともWIMPとは全く無関係かもしれません。でも、両方ともWIMPの衝突なのかもしれない。

まだ明かな発見ではないけれど、もう少しなのかもしれない、と言うのが、大方の物理学者の見方だと思われます。


じゃあ、これからダークマターの実験はどうなるのか。

もっと大きい探知機を、というのが、当面の課題です。

CDMSのように、超伝導体を使うような実験は、大きくするのが比較的難しいものです。大きくしやすいものとして、液状のキセノンやアルゴンを使った実験があります。液体の実験では、今、100kg級の探知機での実験が進んでいて、1トン級の探知機がそのうち現れるかもしれません。

ただ、キセノンなどを入手するコストを考えると、数トンがリミットかもしれない、というような話です。カミオカンデは、3000トンもありますが、あれは水ですからね。超純水とは言え、キセノンやアルゴンよりはずっとずっと安いんです。


CDMSの結果が、WIMP発見の一歩手前だと、物理学者としては思いたいところです。でももしかすると、地球の研究室で、WIMPと普通の物質の間に起こる衝突が観測出来る日は来ないかもしれません。

この、先が見えないのが、研究の面白さの1つです。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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