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WIMPの資格

CDMSが、探知機の中で衝突が起こったことをどう観測するのかは前回書いた通り。でも、音やイオン化に繋がる衝突を起こすのは、観測したいダークマター、WIMPだけではありません。

宇宙線に衝突されるのを防ぐために、地下深くに潜ったわけですが、地中にも色々な放射性物質があります。放射線の種類としてまず挙げられるのが、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の3つ。どれも、不安定な原子核が、もっと安定した他の原子核に姿を変える際に放出するものです。

アルファ線は、不安定な原子核が分裂して、ヘリウムの原子核(陽子2つと中性子2つ)を吐き出したもの。

ベータ線は、電子

ガンマ線は、光(光子)、ですが、X線よりもさらに波長が短く、エネルギーが高いものです。

そして実は、ダークマターの実験ではこの3つよりも厄介になるのが、中性子です。中性子は、名前の通り電荷を持たない(中性)ので、下手をすると物質の中をスルリと通り抜けてしまいます。さらに、探知機の中で衝突した場合に、WIMPと同じ様に、原子核と衝突するんです。


こういったWIMP以外の粒子を避けるにはまず、シールドを張るのが最初の策です。WIMPは普通の物質とはほとんど反応しないので、シールドがあってもWIMPは関係無く通り抜けてきます。(ニュートリノの実験でも似たような事が言えます)

Shielding
↑銅で出来た丸いのが、昨日写真を載せた冷却装置(探知機はその中)。その周りの白い物が、ポリエチレン。さらに周りに、鉛がレンガのように積まれてます。ポリエチレンも鉛も、中性子を吸収するのに特に適した物質です。


これだけのシールドを張っても、ベータ線やガンマ線はいくらか通り抜けてきます。いくらか、でも、大変な事です。WIMPの衝突は、何年か観測しても、数回あるかないかだと思われていますから。

WIMPの衝突と、シールドを通り抜けてきた電子や光子との衝突を、区別出来ないといけないわけです。


ここでポイントになるのは、ベータ線やガンマ線が探知機の中でイオン化を起こすためには、探知機の中の原子核にぶつかるのでは無くて、その周りの電子にぶつからないといけない事です。電子は原子核と比べるとずっと軽いですし、光子には質量がありません。なので、電子や光子が原子核とぶつかっても、原子核はビクともしないんですね。

こういった放射線でも、電子に当たれば、電子を弾きだして、イオン化を起こすことが出来ます。


というわけで、探知機の中で音とイオン化が同時に起こる現象は、WIMPの原子核との衝突、と、ベータ線やガンマ線の電子との衝突、の2種類になります。

実は、CDMSが音とイオン化を両方計測しているのは、この2つを区別するため、です。

Signal-Noise

これがそれを示したグラフ。本番の実験を始める前に、装置の調整のために試しにベータ線、ガンマ線、中性子を当てた結果です。

まず、赤い点は、ガンマ線が電子に衝突した場合で、青い丸が、中性子が原子核に衝突した場合。縦の軸が、イオン化の信号の強さ

赤い点が上のほうに固まっていて、青い丸が下のほうに固まっているのは、ガンマ線が電子に当たった場合は、中性子が原子核に当たった場合よりも、電子が多く弾き出される、という事です。

WIMPを探す際には、電子が沢山吐き出される衝突は無視して良い、という事です。


次に、黒い点が何かと言うと、これはベータ線が電子に当たった場合。黒い点の中には、イオン化の信号が小さい場合もあって、中性子が当たったのと混同してしまいそうです。

これは、電子の衝突が、探知機の表面近くで起こるからだそうです。近くにある表面に影響を受けてしまうんですね。(なぜイオン化が減るのかは、ちょっと自分には説明出来ませんが、周りに他の物質がある場合とない場合で、実験結果が変わるのは不思議ではないと思います)

ベータ線の衝突と、原子核への衝突を区別するために役に立つのが、音の波形

表面近くでは、装置の内部と比べて音が早く伝わるんだそうです。そのために、衝突が表面で起こるか内部で起こるかで、音の波の形が違ってくるんですね。

グラフの横軸は、この音の波の形の違いを数値で表したものです。左側は、表面近くで起こった衝突、右側は、内部で起こった衝突です。ベータ線によって起こった衝突(黒)が、左側に集中しているのが分かります。


まとめると、探知機の内部で起こった、イオン化の信号が小さ目の衝突、が見つかれば、WIMPの衝突だと思われるわけです。


次回はやっと、このCDMSという実験がどういう結果を出したのか。12月に発表されたばかりの話です。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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世紀の大発見?

ここまで、CDMSという実験が、どうやってダークマター候補のWIMPという粒子を探知しようとしているのか書いてきました。(前回) 果たしてど...

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面白いです!

ところで、

>WIMPを探す際には、電子が沢山吐き出される衝突は無視して良い、という事です。

という結論はどこから来たのでしょうか?
WIMPの性質が分かっていないとこれは言えない気がするのですが、違うのでしょうか。

adbmalさん

WIMPがダークマターだとすると、地球に対しての速度は数百km/sで、この程度の速度だと、原子核とは慣性衝突しか出来ないんですね。

ぶつかられた原子核が励起状態になる事がないとなると、衝突の後なにが起こるのかは、原子核に伝わった運動量だけで決まる事になります。中性子でもWIMPでも、同じ運動量を原子核に与えたら、衝突の後に起こる事は同じなはず、というわけです。

こういった実験は、特定のWIMPのモデルに依存しない代わり、質量と反応断面積しか分からない、とも言えます。
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アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

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専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

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