スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

WIMP

ダークマターの正体が何なのかについては、色々と仮説が立てられていることは話しました。有力なものの1つに、WIMPと呼ばれる粒子がダークマターだとする説があります。WIMPは、Weakly Interacting Massive Particle、「弱く反応する重い粒子」の略。弱虫の意味がある英単語、wimpにかけた名前です。

WIMPの特徴はまず、陽子や中性子の10~1000倍くらいの質量、つまり、原子核と大体同じくらいの質量を持っている事。(原子核は数個から200個くらいの陽子と中性子で出来ているので)

そして、ダークマターの候補だということから分かるように、電磁力や強い相互作用(核力)などの、強い力で反応することが無い、という特徴があります。ダークマターであるためには、重力では反応しないといけませんし、もう1つの知られている力、弱い相互作用でもWIMPが普通の物質と反応する可能性はあります。さらに、この4つの知られている力とはまた別の、新しい種類の反応を見せる可能性も無いとは言えません。とにかく、電磁力と強い相互作用は無し、という事。

なんでWIMPがダークマターの有力候補なのかは、また別の機会に話そうかと思いますが、今日は、このWIMPがダークマターだったとして、どうやって検知するのか、です。


光は電磁波なので、電磁力と反応しない物質を望遠鏡や顕微鏡で見ることは出来ません。という事は、WIMPを検知するためには、なにかもっと間接的な手段で、WIMPが普通の物質と反応した事を見ないといけないんです。

電磁力と強い相互作用に影響されない粒子、と言うのは、他にもあって、これは検出されています。それは、ニュートリノ。日本の研究施設が先端を行っているので、名前は聞いたことがあるんじゃないかと思います。ニュートリノの検出のために、どういう事をしているのかは、WIMP検出のヒントになります。


岐阜県にあるスーパーカミオカンデというニュートリノを観測するための装置は、3000トンの超純水が入った巨大な水槽です。

どうやってただの水槽でニュートリノを見つけるかと言うと、ニュートリノは、水の分子の中の電子とぶつかって、電子を水から分離させることがあります(これは、弱い相互作用による反応です)。そして、カミオカンデの水槽の壁には、電子が水の分子から分離されて、単独で動いている事を検知するための装置が付いているんですね。(注)

Super-K

要するに、WIMPを観測するにも、普通の物質とぶつかった場合の、その衝突の影響が観測出来ればいいんです。


最初に書いたように、WIMPは原子核と同じくらいの質量を持っています。という事は、原子核と正面衝突出来たとすると、なかなかのインパクトがあると思われます。(ニュートリノの質量はとても小さいので、原子核と衝突してもほとんど影響がありません)

原子核が、他の原子核にぶつかられるのと似た反応を検知出来る装置を作れば、WIMPが見つけられるかも知れないわけです。


実際のところ難しいのは、単にこういう反応を検知出来る装置を作ることじゃないんです。問題なのは、WIMP以外の物質に装置がぶつかられないようにする事と、もしWIMP以外のものにぶつかられたとしても、これはWIMPじゃないよ、と分かるように装置をデザインする事です。衝突があったよ、という証拠があっても、衝突してきたのがWIMPなのか、原子核なのか、電子なのか、ガンマ線なのか、ちゃんと分からなければ、WIMPの発見とは言えませんから。


WIMP以外のものにぶつかられる回数を減らす方法は、ニュートリノの実験がまたヒントになります。

ニュートリノの実験は(多分)全部、鉱山にあります。なぜかと言うと、地上には、宇宙から色々な粒子(宇宙線)が降り注いでいて、実験装置にどんどん当たってきてしまうからです。地下深くに潜れば、こういった粒子は土と反応するので、実験装置まで届かなくなります。ニュートリノなら、他の物質とほとんど反応しないので、土の中を通り過ぎてくるわけです。

WIMPを測る際にも、ニュートリノ実験と同じ様に鉱山に装置を置くことになります。


地下に潜っても、邪魔になるものが無いわけではありません。地面の中には、色々な放射性物質があります。放射性物質が出すのは、電子、中性子、原子核、ガンマ線(エネルギーの強い光)です。

こういった邪魔者をWIMPと区別するために、実験物理学者たちはいろんな工夫をしています。その工夫の1つと、先月発表された実験成果を、次回書いてみます。

(注)正確には、電子が光より早く移動する際に出る、チェレンコフ光、というのを観測しています。これは、音速より速い飛行機から出るソニックブームと同じ様な現象です。水の中での光の速度は、真空での速度(いわゆる光速)の約4分の3なので、電子の方が光より早く動く事が可能なんです。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

CDMS

ダークマターの候補のWIMPという仮説上の粒子について前回書きました。 どういう装置を使って、WIMPを観測するのか。CDMSという実験の例を紹介...

コメントの投稿

非公開コメント

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

ブログ内検索
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
リンク
RSSリンク
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。