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足りない物質~その3

銀河系内の星の速度や重力レンズの分析から、新しい種類の物質、ダークマターがあると思われることを書きました。

ただ、どちらの証拠も、パッと見でわかるものではない、ように思います。新しい種類の物質でもなんでもなくて、たまたま、望遠鏡で観測しにくい物質があるんじゃないか、と言われると、細かい話に立ち入らないと反論できませんから。


今日は、ダークマターは、普通の物質とは確かに違うんだ、と一目で分かる証拠を紹介します。それは、弾丸銀河団、と呼ばれる銀河の集まりを観測して出て来たものです。


この弾丸銀河団、人の目で見える光(可視光)で見ると、なにも変な事がありそうには見えないですし、なんで「弾丸」銀河団なのかも良く分かりません。

可視光

でも、X線を感知する望遠鏡で見てみると、面白い事が分かります。

X線
コーンの形をしたX線の元があって、弾丸のように見えます。

銀河系の中でX線を発するのは、主に熱いガス。この写真は、弾丸銀河団の中の銀河系2つが衝突したのを捉えたものだと考えられます。コーン状になっているのは、高速でガスが衝突した際に出来たショックウェーブです。

そしてこのX線の観測などから、熱いガスが、この銀河では質量のほとんどを占めている事も分かりました。という事は、この銀河団の重力レンズとしての性質を分析すれば、ガスの部分に質量が集中しているように見えるはずなんです。


実際に、弾丸銀河団の向こうから来る光がどういう風に曲げられているのか調べた結果が、↓これ。

dark matter
可視光とX線(赤)の画像と重ね合わせて、青い色で表されているのが、重力レンズから分かった質量の分布です。

質量が、X線を発するガスとは、全然違うところに集中しています

重力レンズから見た質量分布と、望遠鏡のデータから見た質量分布がここまで違う、というのは、重力レンズの理論を微調整したら辻褄が合せられるような食い違いではありません。これは、どう考えても新種の物質がある証拠だ、と大体の物理学者は考えていると思います。


質量分布のほとんどが、星でもガスでもない、新しい物質だとして、なぜこういう分布なんでしょうか

ガスの分布が、衝突の起こった辺りに残っているのは、ガスとガスが衝突した場合、するりと通り抜けられないように摩擦(空気抵抗)が起こるからです。これは元はと言えば、ガスの中の分子の間で、引きよせ合ったり、反発したりと、色々な力が働いているから。

一方、ダークマター同士や、ダークマターとガスの間では、そういった摩擦は無く、するりとお互いを通り抜けてしまうのだと考えられます。だから、衝突の場所から、ガスよりも速く離れていっている、と。この事から、ダークマター同士、ダークマターとガスの間には、重力以外の力が働かない、または、他の力が働いたとしてもそれはとても弱いものだと考えられるんです。

ダークマターと普通の物質の間にはほとんど反応が無い、と言うのは、地上の実験ではダークマターの証拠が無かった事の説明にもなります。


天文観測から出てきた証拠から、ダークマターは、全体の質量が多いので、重力で普通の物質に大きな影響を与えるけれど、どうやらそれ以外には、ほとんど普通の物質と関わりあう事がない、という絵が見えてきました。

そんなダークマターの性質について、これ以上どうやったら分かるのか。続きます。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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