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足りない物質~その1

(ルービンの観測について、訂正があります)

ダークマターについてのセミナーのほとんどは、今回する話をちょろっとして始まります。ここにいる人(予備知識のいくらかある物理学者)はもうみんな知ってるよ、と毎回思うんですが…


近代物理学と天文学の最初の定量的な発見と言っていいのが、ケプラーの法則。惑星が太陽を回る軌道には、単純に表せる法則性があることが観測から分かったんです。

今回の話に関係あるのは、そのケプラーの第3法則。

惑星の公転周期の2乗は、軌道の長半径の3乗に比例する」という法則です。(長半径は、太陽からの距離として考えてもらって結構です)

これはつまり、太陽からの距離が離れると、ある規則に沿って1年の長さが伸びる、という事です。


そして、この法則から少し計算してもらえると分かるのは、惑星が公転する際の速度の2乗は、太陽からの距離に反比例する、という事です。(軌道の長さが、太陽からの距離と比例する事を使えば分かります)

これは、遠くなればなるほど、太陽からの引力が弱くなるから、です。ひもにつけたものを振り回すお約束の実験をやってもらえると分かります。速く回すためには、ひもをより強く引っ張らないといけません。

実際、8つの惑星の太陽からの距離と、公転の平均速度をグラフにしてみると、きれいな曲線で繋がります。

Solar System


さて、膨大な数の星で出来た銀河系の中に太陽系がある事、そして、銀河系は他にもあるという事は、20世紀前半にやっと分かった事です。

銀河系も太陽系と一緒で、天体の間に働く引力でまとめられているはず、という事で、銀河系の中のガスが銀河の中心を回る速度にも、似たような関係が成り立つのかどうか確かめた人がいました。有名なのは1970年代にこの研究をしたヴェラ・ルービン。


遠くのガスの速度をどうやって測るかと言うと、光にも、音と同じでドップラー効果が起こる事を利用します。救急車が近づいてくる時は音が高く聞こえて(周波数が上がって)、遠ざかっていく時は低く聞こえる(周波数が下がる)のと同じように、近付いてくるものが発する光は少し青がかって、遠ざかるものが発する光は赤っぽくなるんですね。

これは、光が元々あまりに速いために、肉眼で分かるようなものではないです(*)。ガスから来るスペクトルを綿密に調べて、少し光の波長がズレていたら、あ、動いているな、と分かるんですね。そしてそのズレの度合いから、速さが分かります。


太陽系の場合と少し違うのは、太陽系の質量のほぼ全て(99.86%)は太陽に集中している事。銀河系の場合、中心から離れた場所にも質量が分布しているので、太陽系の場合のようにシンプルな曲線に沿って速度が下がっていくようにはなりません。

想像図としては、こんな感じ。

rough sketch

中心に近過ぎる場合は、自分より内側にある星が少ないので、中心に向かって引っ張られる力も比較的弱くなってしまうはず。ですが、星がまばらになるほど遠くに行けば、太陽系と同じ様に速度の2乗が距離と反比例すると考えられます。


実際のグラフはこんな物です。線は特に意味が無いので無視して下さい。(1970年のルービンの論文から。アンドロメダ星雲のデータです。)

Andromeda

グラフの左の方、つまり銀河系の中心から近くのデータは予想通り。

でも、中心から遠くに離れても、速度が落ちる気配がほとんどありません

他のどの銀河系を調べても、中心から遠いガスの速度は遅くならないことが分かりました。


こんな事が起こる理由は何か。主に2つの可能性があります。

1.他の全ての観測から正しいと思われている重力の理論(一般相対性理論)が実は間違っていた。
2.望遠鏡の観測では捉えられていない、未知の物質がある。そしてこの物質は、星がまばらになるほど中心から遠い所にも沢山ある。

もし、理論が間違っていないとすると、見えない物質が、銀河系の中に沢山あるという事になるんです。これが、はじめて広く受け入れられたダークマターの証拠です。


(*)信号無視でパトカーに止められた物理学者が、「速く進みすぎて、赤の信号が青に見えたんだ」、と言う、正直つまらないジョークがあります。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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足りない物質~その2

ダークマターの証拠、第二弾。(第一弾) 今日はまず、前の重力の話にちょっと繋げていきます。 光には、質量がありません。ニュートン...

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No title

ものすごく初歩的な質問をしますが、ダークマターという命名の仕方は、宇宙が暗いからではないですよね?
正体不明(これを英語だとダークと言う?)なマターですからよね?
その辺からわかりません。

kashさん

ダークと呼ばれるのは、光を発しない(望遠鏡で見えない)物質だからです。

その辺から、といっても、あまり大事な部分とは思えませんが、他で分からない部分があるんでしょうか?

No title

あ、この記事の内容で疑問を抱いた箇所はないです。
それ以前の疑問で、
「ダークマターとダークエネルギーは別モノですよね?」
というのがあったんです。^^;

kashさん

ダークマターとダークエネルギーは全くの別物です。ダークマターは、どんな質量を持っていて、他の物質とどんな反応をするのかが分かっていませんが、重力のもとでは、他の物質と同じ様に振舞うと考えられています。(同じ様に振舞うと考えても、データとの矛盾はありません)

ダークエネルギーの方は、普通の意味での物質ではありえません。有力説には、真空自体が自然に持っているエネルギーだというのがあります。

ダークエネルギーの名前のダークは、正体が明らかでないという意味です。ダークマターの由来かとkashさんが思った理由です。紛らわしいのでちょっと整理しますね。

まず、光と反応しない物質、という意味で未知の物質がダークマターと呼ばれるようになった。
元々の由来ではないけれど、正体が明らかでない、という事も示唆するちょうどいい名前だった。
未知のエネルギーが発見されて、ダークマターからの類推でダークエネルギーと命名された。

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アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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