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質量?重力?(後半)

(前半でも書きましたが、無重量状態の話から読んできて、頭がこんがらがるかもしれません。こんがらがったら、これだけ頭に残して、他は忘れてください。「宇宙船の中が無重量状態なのは、宇宙船と中の物が、地球の重力で全く同じように引っ張られているから。宇宙に出たら重力が無くなる、なんてことはない。」)

前半を短くまとめます。

質量には、重力のもととしての役割(重力質量)と、物が加速されるのを妨げる役割(慣性質量)があります。この2つの役割を、質量という1つの数値が担っている事を、等価原理と言います。

そして、等価原理が成り立つ事で起こるのは、どんな質量、形、材質を持ったものでも、重力の影響では同じように動く、という事でした。これは、電磁力など、他の力には無い性質です。


これは、話の始まりだった宇宙船での無重量状態に大いに関係がありますね。宇宙船と、その中の人や物は、地球からの重力で同じ軌道を辿っています。同じ軌道を辿っているという事は、宇宙船と中の物の相対的な位置が変わらないという事。だから宇宙船を基準として見ると、中の物はどこにも引っ張られず、ただ浮かんでいるように見えるわけです。

もし、等価原理が成り立たなかったとします。宇宙船より人間の方が強く引っ張られるようだと、宇宙船の中の人間は地球に向かって引っ張られているように感じるでしょうし、逆に宇宙船の方が強く引っ張られるのなら、人間は地球の反対側に引っ張られているように感じる事になったでしょう。


アインシュタインは、こういった状況を、宇宙船が出来るずっと前(1906,7年頃)に想像していました。彼が考えたのは、もしエレベーターに乗っている時、ケーブルが切れたとしたら、中の人はどういう観測をするんだろう、という事でした。これは宇宙船の場合と同じで、乗り物と中の物が一緒に落ちているので、中の人間は重力が無くなったかのような体験をします。

彼はこんな事も考えました。周りに何もない空間に、エレベーターがただ浮かんでいたとします。この場合は、中の人間は、本当の無重力状態を体験しています。それがある時、宇宙人がやってきて、このエレベーターを一定の力で引っ張って加速させ始めたとします。すると、中の人間は、進行方向の反対側に向かって引っ張られているように感じます。(電車など普通の乗り物でも体験出来る事ですね)

これはアインシュタインがどこかに書いた話かどうかは知らないんですが、もう1つ例を挙げると、遠心力があります。円運動をしている物に乗ると、円の外側に向かって引っ張られるように感じます。これは、乗っていない人から見ると、乗っているものが真っ直ぐ進もうとしているだけで、外に向かって力が働いているようには見えません。


こういった思考実験からアインシュタインが思いついたのは、こういう事です。

外の状況が分からなかった場合、加速運動と重力の違いは区別出来ない。加速運動と重力は一緒、というのが、等価原理のもう1つの意味だと気が付いたんです。

この視点から言うと、宇宙船の中は無重力、というのもあながち間違いではないんですね。地球の視点で見たら、宇宙船と中の物が一緒に引っ張られているんだけれども、宇宙船とその中だけに注目して見ると、確かに本当の無重力と違いはないんです。宇宙船の中でどんな実験をしても、本当に重力が無かった場合と同じ結果になるんですから。(外を見たりするのは当然無し。中だけでの実験に限ります。)


面白いかもしれないけれど、こんな事考えて何の役に立つの?と思われるかもしれません。実はこの等価原理、アインシュタインが、ニュートンの理論を塗り替えた重力の理論、一般相対性理論を考え出すキッカケの1つだったんです。(注1)

彼は、重力がかかるとどんなものでも同じように落ちる、という事は、重力というのは、個々の物に働く力というよりも、どんなものにも共通の、時間と空間の性質ではないか、と考えたんですね。そこから行き着いたのが、物質(注2)がある所では時空間が曲がって、その曲がった時空間に沿って物質は動く、という一般相対論なんです。

一般相対論についてのこれ以上詳しい話は、ちょっとここでは難しいですね…質問があればコメント欄でどうぞ。


(注1)一般相対論の位置付けを大雑把にまとめると、ニュートンの万有引力と、光の速度が視点に関わらず一定、という特殊相対論を組み合わせたものです。

(注2)一般相対論では、質量に限らず、あらゆるエネルギーが重力のもとになります。質量が無いはずの光が重力で曲がる、という一般相対論の予想は、光がエネルギーを持っているから起こることです。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

アシュリーさん、私のような物理音痴がコメント最初に書いて申し訳ないんですが、前半は式が出てきたところで挫折してしまいました。自分の頭のキャパを超えたんです。でも、今日は最後まで読めました。とにかく、物理の言葉に慣れること。次に、ちょっとづづ想像力を使って理解していくこと。アシュリーさんのブログを知らなかったら、この脳味噌使わないで人生終わってました。ありがとうございました。

かのちゃん♪さん

むしろ、分からない、という人がコメントしてくれる方が、どの辺が引っかかりやすいのか分かるので、自分としてはためになります。

数式を使うと、読まない人、伝わらない人が増えるので、出来る限り使わずに、と思ってますが、前回は、数式以上の説明は無いと思ったので使いました。

19世紀のアメリカの物理学者、ジョサイア・ギブズにこんな逸話があります。大学の会議で、外国語の授業を増やそう、そして減らす授業は数学にしよう、と決まりそうになった時、ギブズは、"Mathematics IS a language."、数学も外国語だ、と言ったというんですね。

数式には、ちゃんとした意味があって、その意味を理解しなければ、ただの丸暗記です。だからただ公式を並べるだけの教育なんかには大反対ですが、数式を使った説明というのもある、というのは知ってもらいたいな、と思いました。

思考実験はアインシュタインの十八番だったんですが、本当に想像力の体操になると思います。毎日物理学を勉強していても、シンプルなアイディアに驚かされることがあります。

No title

前後半を読んで、等価原理についてはわかった気がします。

アインシュタインは「加速運動と重力に違いは区別出来ない」という発見(?)をしたようですが、アインシュタイン以前は、等価原理というのは質量という1つの値で2つの意味(重力質量、慣性質量)を持つ、としか認識されてなかったということですよね?
(等価原理自体、あまり表舞台に出なかったのでしょうか?)

アシュリーさんの記事を読んでいると、等価原理のもう1つの解釈を得たことによって、重力を時間と空間の性質としたところにアインシュタインの凄さがあるように感じたんですけど、そういう理解でいいんでしょうか?

ちなみに、
一般相対性理論については、理論自体に対しては当然ですが、ゲーデル解に特に興味があります。
(ゲーデル解によると、宇宙は回転している、となるみたいですし)
ただ、ウィキペディアなどを見ても、いまいちわからないんですよね。
数式が普通に羅列してあったり、説明文が難しかったり。

kashさん

アインシュタイン以前には、等価原理は表に出ていなかった、という事で良いと思います。どんなものも一緒に落ちる、というのは、聞かれればみんな、それはそうだ、と答えたでしょうが、それは単なるトリビアで、重要な事とは考えられていなかったのだと思います。

アインシュタインの凄さは、重力は時間と空間の性質ではないか、と考えた事ですし、そのアイディアから全く新しい理論体系を作り上げられるほど、1つのアイディアについて深く、真剣に考え続けられた事だと思います。

ゲーデル解は、自分も良く理解していません。ただ、現実的な宇宙論では無い、とだけは言えます。あくまで、アインシュタイン方程式にはこんな解もあるよ、と、面白い例を披露しただけだと思っています。彼の解が出る以前は、アインシュタイン方程式の解には、あまり種類が無いのではないかと思われていた、という話を読んだように記憶しています。

ありがとうございます。

コメントのレス、ありがとうございます!なんだか、遠い世界から時空を超えてメッセージが降ってきたみたいな感覚です。だって、本来なら私とは対話にならはずなのに・・。数学も外国語・・なるほど・・外国語の勉強も、丸暗記は苦手です。子供みたいに体験しながらでないと・・。でも、知性は暗記力、とも言いますでしょう?ほんとの知性って何でしょう?実は想像力だったりして?思考実験・・・・う~ん、感嘆符しかないみたいな頭の中で、ちょっと何かが変化しそうですぞ・・。先生、ありがとうございました。

かのちゃん♪さん

>遠い世界から時空を超えてメッセージが降ってきたみたいな感覚です。だって、本来なら私とは対話にならはずなのに・・。

間違ってはいないですよね。インターネットってすごいと、最近つくづく思います(笑)

>子供みたいに体験しながらでないと・・。

数学も、そうじゃないでしょうか。色々自分で試してみて、初めて理解出来るものだと思います。

>ほんとの知性って何でしょう?

これは、うちのブログのテーマの1つです(笑)今の状態だと探しにくいので、カテゴリーを作ってしまおうかと思います。

暗記力は、知性のうちに占める割合は低いんじゃないかと思っています。覚えておくだけなら、今のコンピュータにも出来る事ですから。
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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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