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「無重力」状態って?

先週の「一言だけ」の記事、前々から分かっていた人には、そうだよね、と思ってもらえたかもしれませんが、そんな話は聞いた事がない、という人は混乱しまったのではないでしょうか。まず、書いたきっかけから。

子供の、「人工衛星はなんで落ちてこないの?」という質問に、「地球の外は無重力状態って言って、ものが落ちないんだよ」、と親が答えた話を聞いたんですね。

まず結論から言ってしまうと、この説明はあらゆる意味で間違ってます。なんでおかしいのか、今度はくどいと思われるくらいの感じで解説したいと思います。


人工衛星が、どういう風に動いているのか考えるのが最初。人工衛星と言うからには、人間が作ったわけではない衛星、つまり月と似た運動をしているという事。人工衛星は楕円軌道で地球の周りを回っているんです。


では人工衛星は、どうやって地球と離れていく事も、地球に落ちる事もなく、軌道を保って動いているんでしょう?

これは、ひもの付いたボールを円軌道に沿って動かしてください、という問題を考えてみれば分かると思います。一番普通に思いつくのは、投げ縄を持ったカウボーイのように、ひもを引っ張りながら、ひもごとボールをぐるぐる回す方法のはず。

ボールが離れていかないのは、ひもで引っ張られているから。引っ張られているのに円の中心に近づいていかないのは、引っ張られている方向と垂直の方向に素早く動いているからです。

人工衛星が地球から離れも落ちもしない軌道に沿って動いているのは、全く同じ原理です。人工衛星を引っ張っているひもは、地球との間に働く重力(引力)です。もし重力が無かったらどうなるのか、は、ひもを持ってボールを回している最中に、ひもから手を離してもらえば分かります。あさっての方向に、一直線に飛んでいってしまうはずです。

地球に向かって落ちていかないのは、人工衛星は、飛行機も比べ物にならないほどのスピードで動いているからです。(地表から100km200~2000kmの高さを飛んでいる低軌道の人工衛星は、最低でも秒速7.8km秒速約8kmのスピードで動いています)


アイザック・ニュートンが「万有引力」といったのは、地球上でものが落ちる時に働く重力と、天体を軌道に保っている力は同じ力だ、という意味でした。地球と月の間にも、地球と太陽の間にも働く引力。宇宙空間に出るとそれが無くなる、なんて事はありません。この大発見の内容がちゃんと浸透していないのはガッカリですが、300年以上経っても一般に理解されていないような事を考えついたニュートンが偉大だとも言えるんでしょうね…


宇宙に出ると重力が無くなるなんて事はない、と言ってしまったので、2つ目の問題が出てきます。それは、「じゃあ、宇宙が無重力っていうのはどういう意味?」という問題。

まず言いたいのは、「無重力」という用語は誤解しか招かない事。一般相対論の等価原理という観点から言うと、無重力という言葉に問題は無いと言えますが(この点に付いてさらに質問があれば説明します)、等価原理を理解している人は人口の1%もいないでしょう。大学1年の授業でも、無重力、とは教えられません。そんな、専門知識がないと正しく理解出来ない用語は、一般向けに使うべきではありません。

代わりに使うべきだと思うのは、「無重量」。体重計に乗って体重を測ろうとしても、0kgになってしまう、という事です。(というか、乗ると言っても、くくり付けでもしなければ体重計の上に固定出来ないわけですが)


なぜ、宇宙船の中は無重量なのか。これはもう先週書いたように、「宇宙船とその中のものが、一緒に落ちている」からです。これは、口でどうこう言うより、映像で見てもらった方が良いかも。



宇宙飛行士が、無重量状態に慣れるために地球上で行う訓練では、飛行機を放物線に沿って飛ばします。放物線と言うのはその名の通り、投げたものが、勝手に落ちる時に描く線。フリーフォールというやつです。(これは訓練じゃなくて体験の映像ですが。weightlessness、parabolic flightなどで検索すると他にも出てきます)

この場合、飛行機と、その中のものが、一緒に落ちている、と言うのは理解してもらえたでしょうか。宇宙船の中で、ものが落ちないように見えるのは、地球からの引力がないからではないんです。


もう少し身近な例で言うと、エレベーターやジェットコースターで体が軽くなる気がするのの延長です。遊園地で、真っ直ぐ落ちるだけの乗り物もたまにありますね。バスがでこぼこ道を通る時、一瞬体が浮いて、内蔵が浮くような感じになるのも同じ事。宇宙船だと、あのような状態がずっと続く、という事です。


逆に、なんで普段はこうならないのか、と言うのも大事なポイントだと思うので最後にちょっと。

地表で暮らしている人間は、重力を受けて下に向かって引っ張られているわけですが、地面に押し上げられる事で、地下に落ちずに済んでいます。普通に飛んでいる飛行機も、重力に逆らう力(翼によって起こる揚力)をかけて、大体水平になるように飛んでいるので、キャビンの床は、人間が地球に向かって落ちないように押し上げてくれているわけです。

一方、無重量状態の場合は、宇宙船にしろ、放物線を描く飛行機にしろ、地面だと思っているものが落ちているんですね。

無重量かそうでないかの違いは、重力があるかないかではなくて、重力に逆らう力があるか無いか、です。無重力、と言う用語がいかに変なのは、これに気付いてもらえれば分かると思います。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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質量?重力?(前半)

無重力、と言われるのは、地面だと思っているものと一緒に落ちる事であって、重力が無くなってるわけじゃない(だから、無重力じゃなくて無...

質量?重力?(後半)

(前半でも書きましたが、無重量状態の話から読んできて、頭がこんがらがるかもしれません。こんがらがったら、これだけ頭に残して、他は忘...

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アシュリーさんが先日の記事でわざわざ一言書いたのは何故なのかはわかりませんが、それはともかく、無重力は等価原理だとOKというところがわからないのでお願いします。
(ついでにお願いするならば、等価原理自体の説明も・・・)

それから、人工衛星も徐々に落ちていってるんじゃないんですか?
古くなった衛星が大気圏で燃え尽きるっていうニュースがあったように記憶してますが。

kashさん

わざわざ一言書いたというより、時間が無かったので一言だけ書いたんでした。これだけで伝わるという思い込みがあったようなので、問題があったと思います。等価原理だと、無重力でOKというのは、等価原理を説明しないと無理なので、あとで記事にして書きます。コメント欄だとスペースが足りないと思うので。

人工衛星が落ちるのは、衛星が飛んでいる高度に、(少しだけですが)空気がまだあるからです。空気との摩擦によって速度が削がれて、少しずつ落ちていってしまうんです。

勉強になりました

はじめまして。なんだか読み始めたら、ぐいぐい惹きつけられてしまいました。物理学なんて、まるっきり縁がないんですけど、なんとなく理解できました。”なるほど~”って感じです。イメージが出来ました。ブログのデザインからなんとなく女性かな?と思ったら、骨太ブログですね。これからも寄らせて頂きます。ありがとうございました。

はじめまして

物理学はまず、視覚などでイメージが出来るかどうかだと思うので、伝わって良かったです。まるっきり縁がないとの事ですが、身近なものの動きや性質は全部突き詰めれば物理学です。勉強した事がなくても、頭が勝手に知っている事は沢山あると思っています。

色々学術的な話をしていますが、出来るだけ平易に書くよう意識しています。分かりにくかった事を分かりやすくするのが学問のはずなので。デザインも、堅苦しいとコメントし辛いですよね...といいつつこんな堅苦しいコメント返しなんですが。よろしくお願いします。

お久しぶりです

自転も考えると一層楽しいですよね。
自転とケプラー回転とに差があるというのが肝ですね。

No title

解らな過ぎると、そこに情報があっても・・・疑問にもあがらなかったり、知識として持ち合わせていても必要な関連がついていなくて全く無意味だったり。アシュリーさんの記事を読ませていただいてようやく色々連鎖で疑問があがった次第です。
そういえば月にも地球の1/6の引力があると習ったけ。8km/s?!そういえば人工衛星はどうやって移動しているんだ?! など今更な。でもおかげさまで、私が及べる範囲内でいろいろ調べたり解ったりすることができました。
本当にイメージができないのは致命的なのでしょうね~ 化学でも小学生ころは原子は手をつないでる、大学では電子の雲のようなイメージっと習いましたが全くイメージが?!?!(涙) 物理に戻って、引っ張られたり、押されたりしている箇所で逆に働く力ってどうして働いているのですかね・・・?! そこから解ってない(涙)

adbmalさん

自転ですか。ややこしい話を出してきましたね(笑)いや、等価原理の話をする際に自分も出すつもりですが。

潮汐力なども面白そうですね。

kawazu8さん

何が分からないのか分からない、質問出来ないという状態ですよね。分かります。

もう調べられたかもしれませんが、人工衛星は本当に引力に引っ張られているだけで、エンジンのようなものは基本的に使っていません。宇宙だと空気摩擦がほとんど無いので(全くじゃないです。kashさんとのやりとりを見てください)、引力が無ければずっと真っ直ぐ同じ速度で進んでいきます。

電子の雲も物理ですよ(笑)化学でも教えられますが、20世紀前半に、量子力学、さらに言うと原子物理学で発見された事です。量子力学は物理学者でもイメージするのは放棄している人がいるので、そこまで気にする事は無いと思います。人間が直接観測出来ない原子ですから、人間の直感が働かない事が起きていても何の不思議もありません。

作用には反作用がある、というのはニュートンの第3法則ですね。これも、物理を専攻している人の中にも、日常的な場合にどうやって起こっているのか理解していない人がいると思いますよ。

例えば石を押している場合を考えると、石は色々な分子で出来てるわけですよね。そういった分子が、石という固体の形をしているって言う事は、分子達の間に引き合う力がないといけません。さらに、固体の中の分子はほぼ固定されているので、それぞれの分子が周りの色んな分子に引っ張られる力は、ちょうど釣り合っていないといけません。(引き合う力が無ければ、分子は勝手に色んな方向に行ってしまって気体になります。力が釣り合っていなければ、分子は飛んでは行きませんが動き回れるので液体になります。)

分子と分子が綱引きをしているところに、綱を横から押すのを想像すると、押し返されるのがイメージ出来るかな、と思います。石を押すと、分子同士が一定の距離でいたいのを邪魔しているんで、反発されちゃうんです。


最後に、こんがらがらせるようなことを言っちゃいます。月にも地球の1/6の引力がある、と言うのは、月の表面と地球の表面を比べた場合です。

引力の強さは、引き合っている物体それぞれの質量と比例して、距離の2乗と反比例します。月の質量は地球の質量のほぼ1%で、月の半径は地球の半径のほぼ4分の1です。地球の表面での引力を100で割って、4の2乗を掛けると、大体6分の1になるという事です。

たびたびで(汗)

お陰さまで・・・本当に疑問を持つことが出来、このネット時代調べると教えてくれる場所があり!!! はい、月の引力が地球のと比べて1/6とただ聞いた小学生時代とは違いこの度計算方法にまで出会えましたし、人工衛星も目的とする速度まで達してしまえばエンジンなど不要で軌道を飛びつづけると解りました。 
やはり物理が解らないから、化学も解らないのでしょうね~ でもわからないことが多いと、些細なことから知れることの喜びは大きかったりします(きっかけの疑問があがらないとどうしようもありませんが)。
固体にがその状態であるには、固体内の分子レベルからの力との均衡があるのですね!!! すごく解り易かったです、そこまで説明してくれると!!! 最初から教えてくれればいいのに・・・って小学校のころから説明されていたのに私がスルーしていたのかもしれませんが。 どこかでそうなのかもと思っていたのかもしれません、作用反作用の部分なんだかすごく晴れました!!!

kawazu8さん

インターネットは本当に便利ですよね。何を調べるのかが分かってれば、ですけど。

マクロな物体を押した時に反作用が起きるのは上に書いたような理由なんですが、素粒子レベルでも、第3法則は成り立ちます。例えば、水素の原子は陽子1個と電子1個で出来ていますが、この2つの粒子は電磁気力で引っ張り合います。この引っ張り合う力が釣り合っていないと何が起こるかと言うと、原子全体の重心が、引っ張り合う力が強い方に向かって動いていってしまうんです。なにも周りから働きかけられていないのに、止まっていた物の重心が勝手に動いて行ってしまうのはおかしい、と言うのが作用反作用の法則の元なんです。
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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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