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ウンベルト・エーコの蔵書

今、ナシム・ニコラス・タレブの"Black Swan"って言う本を読んでるんですが、
最初の方にウンベルト・エーコの蔵書の話が出てきます。

エーコは、「薔薇の名前」や「フーコーの振り子」で知られるイタリアの小説家ですが、
本業は哲学者なんですね。
そして、3万冊も本を持っていると言うんです。
(彼の小説を読んだ事があれば驚かないと思いますが、笑)


エーコが3万冊も本を持っている、と聞いて、
「エーコ教授、あなたはそのうち何冊読んだんですか?」
と反応してしまうようでは、蔵書というのが何のためにあるのか分かってない、
と言うのがタレブの主張。

大事なのは、3万冊のうち何冊読んだか、じゃなくて、
3万冊のうち何冊読んでないか。
資料として必要になった時に使える情報がどれだけあるかだ、と言うんです。

確かに3万冊もあれば、
エーコが蔵書の大部分を読んでる可能性はないと言っていいです。
(1日10冊読んでも、3万冊読むには10年近くかかります)
3万冊も持ってる理由は、全部読むためではなくて、
読んでない本を、すぐに手に取れるようになんです。

タレブがこの話で何を言いたかったかというと、
知っている事だけに執着するな、という事です。
僕は本をこれだけ沢山読んだんだからエライ、と思うのを抑えて、
自分の知識の限界、そしてその向こうに知らない事があるのを認識しなさい、と。


蔵書の話に戻ると、物理の研究でも、
アイディアを思いついて、調べ物をしないと、という時に、
すぐに資料に当たれるのと、当たれないのとでは大きな違いです。
アイディアは、思いついた直後が一番発展しやすいので。

出来れば自分のオフィスに本当に役に立つ本は置いておきたいわけですが、
スペースが限られてるので、さらに物理専門の図書館が欲しい。
それも出来れば、オフィスと同じ建物か、すぐ近くに。


うちの大学は、不況の影響で予算が削られて、
大学図書館の予算も大幅に減らされてしまいました。
そこで、物理の建物内にある専門図書館を中央図書館に統合して、
人件費を減らそう、という話が図書館側からいきなり出てきたんですね。

研究というものがどうやって進むのか、
理解していないために出てきた案だと思います。

建物の中に専門図書館を残すためには、
年に数100ドル払っても良い、と思っている研究者もいます。
なので結局のところは、物理学の予算を割いて、
なんとか図書館を残す形で決着するんじゃないかな、と思ってます。


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テーマ : 研究者の生活
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

どこかでタイトル聞いた記憶があるんですが、
ブラック・スワンって経済関係の本じゃありませんでしたっけ?

kashさん

「ブラック・スワン」とタレブが呼んでいるのは、
起こる確率が低く、予測が付かないのに、インパクトの大きな出来事です。
スワンは白いものしかいない、と信じていた西洋人が、
オーストラリアで黒鳥を発見して驚いた事にちなんでいます。

タレブは金融業界で働いている人ですし、経済関係の話も出てきます。
今回の金融危機の前に書かれた本ですが、
このような事がいつか起こるだろう、という風な話もあります。
ただ、本自体は、経済に限らず、社会全体で起きるブラック・スワンに付いてのものです。
例えば第一次世界大戦や、インターネットの普及など。

経済と言うよりは、統計や社会学の話で、
さらには科学の哲学や、認識論(知識とは何か)の話になります。
といっても堅苦しい話では全くないので、オススメです。
記事にリンクがありますが、訳書はもうすぐ出るみたいですね。

No title

そうでしたか。
経済の話は本のパーツとしてなんですね。

興味をそそられる本ではありますが、
家には読んでない本が何冊もあるんで、
それらを消化出来たら(そんな日は来るか、わかりませんけど 笑)
購入の検討をしたいと思います。

kashさん

うちにも本が大量に溜まってるんですが、
このエーコのエピソードは励みになります。
あぁ、全部読まなくても良いんだ、と(笑)

でも、買いすぎには注意しないといけませんね。

No title

『蔵書』というのがそういう概念のものだとはまったく知らず、目からうろこでした。とは言え、私くらい無知ですともともと“向こうの知らないこと”ばかりであると認識しているし図書館やインターネットで調べられる環境がダブレさんのいうような雰囲気の趣旨であろうとは思っていたと思います。それにしても改めてアシュリーさんの記事を読むとなんだかいろんなことが目からうろこ(笑) 私に解かり得る部分は解かりやすく刺激になります。
“薔薇の名前”とは、昔会社の男性先輩に薦められて映画を観た覚えがあります。なんでそんな不可思議なタイトルの物を薦められるのか不思議でしたが、映画を観て何かを感じるものがありました。その感覚は私のボキャブラリーレベルですと、伝えることができないという以前に、自分の中ですら形にならないんです。また観てみようかしら(苦笑)。脳の本で脳力の発揮は、どうしてもハードウェア-指など身体やたとえば言語のような能力に制限されるという内容を読んだことがありますが、そんなようなことかも知れませんね・・・ (話がそれてすみません。刺激を受けて考えがいろんな方に飛び散るもので。。)

kawazu8さん

知らない事を知らないと言えるのは大事ですよね。
それをしないと先に進めませんから。

でももう1つ、注意しないといけない事があるとタレブは書いています。
専門家の予想を信用しすぎない事です。
特に、政治・経済だと、
専門家の予想はあまり当てにならないという統計があるそうです。
こういった分野では、扱っている対象が複雑すぎて、
予測できない事(Black Swan)が起きる可能性が高くなるんです。

「薔薇の名前」の映画は見た事ないです。
ショーン・コネリーが出ているやつですよね?
本は、日本語でだいぶ前に読みましたが、内容はあまり覚えていません。
難しかったのは覚えてます(笑)
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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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