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意図せざる結果

バイオ燃料の記事の続きを書くのが遅れていたら、
都合の良い事にEarth Dayになりましたね。(アメリカはまだ4月22日)


バイオ燃料は環境に優しい、と言うのを前提として、
2005年、アメリカ政府はバイオ燃料をガソリンに混ぜるプログラムをはじめました。

例えば2008年に使われるガソリンに、
合計90億ガロン(約340億リットル)の再生可能な燃料を混ぜる、と決めて、
達成のために補助金や免税を導入したんです。

再生可能な燃料の中でも現在大量生産できる物の1つに、
トウモロコシを原料にしたエタノール(アルコール)燃料があります。

補助金が導入された事で、
アメリカではトウモロコシを育てる農家が増え、エタノールを作るための施設も整備されました。
良い事のように思えるかもしれません。


先週のおさらいをすると、バイオ燃料の中の炭素だけを見ると、
大気から吸収した炭素を大気に戻すだけなので、
確かに石油などの化石燃料よりグリーンです。

ですが、原料を作るために使った農地、水、肥料、農薬、
原料を燃料にするために使うエネルギー、設備の建設などに使われる資源、
肥料から出る二酸化窒素(温暖化に繋がる)なども考慮に入れるとどうでしょう?

さらにエタノールは、水溶性が高いために(現状では)パイプラインで運ぶ事が出来ません。
つまり車で運ばないといけませんから、
石油よりもずっと、輸送のために排出する二酸化炭素が多くなるわけです。

これだけ要素が多くなると、色々な仮定をしないと計算が出来ないようで、
決定的な資料はないんですが、
少なくとも、トウモロコシのエタノールの方がガソリンより目に見えて地球に優しい、
と言うのは現時点ではあり得ない話のようです。

そんな、環境に優しいかどうか怪しいトウモロコシエタノール産業を、
アメリカ政府は補助金で促進しているわけです。


2006年の補助金、免税などの影響を全て足しあわせると、
70億ドル、トウモロコシエタノール産業は国の政策で得をしたという計算があります。
2006年に作られたトウモロコシエタノールの量は、184億リットルなので、
1リットルにつき38セントも政府が払ってあげていた事になります。

1リットルのエタノールを燃やして得られるエネルギーは、
ガソリン1リットルを燃やした場合の大体3分の2なので、
ガソリン1リットル分に換算すると、57セント補助されていたと言う計算。

その頃のアメリカでのガソリンの値段は、1リットルにつき60~80セントだったので、
本来ならガソリンより倍高いエタノールしか作れなくても、ガソリンと競合できる事に。
どれだけトウモロコシ農家や、エタノール生産業者に優しい政策だったかが分かります。


この歪んだ政策の間接的な影響の1つに、
2007~08年の世界的な食料価格危機がありました。

最初に書いたように、
小麦や大豆などから、トウモロコシに大量の農地が切り替えられました。
2007年には、トウモロコシの生産量が前年比で20%以上増えたんです。
このために、小麦や大豆など、
アメリカが輸出しているトウモロコシ以外の穀物の値段は当然上がりました。

トウモロコシの場合、全体の量は増えましたが、
エタノール生産業者は、補助金のおかげでトウモロコシを高く仕入れても儲かります。
補助金のために、需要が不自然な高さまで上げられてしまい、
トウモロコシも値段が上がってしまったわけです。


食料価格への影響や、
見逃されていたバイオ燃料の環境への影響が少しずつ知られるようになって、
エタノールに補助金を出す政策は失敗だった、
という認識が広がりつつあります。

ただ、廃止されるまでは時間がかかるかもしれません。
70億ドルは、アメリカ人1人につき、20ドルにしかなりませんからね。
バイオ燃料は環境に優しい、という大義名分も、
消し切れたとは思えません。

補助金を全面廃止するよりも、
ちゃんと環境のためになる代案を考えた方が早いかもしれません。

テーマ : 宇宙・科学・技術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

ブラジルのエタノールで、成功した人や、 アメリカでもとうもろこし農場のおおい、すっごい田舎に、カジノ(吸い取られるんだろうな・・)ができたというNHKの特集を見て衝撃があったのを覚えています。
日本でも米のもみ殻でエタノールを作れたってニュースがやってました。捨てられるものから、作るのであればいいのですが、儲かるからということで、とうもろこし、を作る。ってのも、問題あるんだろうなって思いました。
 中国が、自動車市場の1番になったってニュースもみましたし、エコとか、経済が成熟しないと無理だろうなとも思うし、国民性が。・・

gaoさん

はじめまして。

ブラジルのサトウキビエタノールについては、
調べていないのでコメントできませんが、
(トウモロコシよりは効率が良いとは読みました)
個人的に問題があると思うのは、
本来儲からないはずの物を、政策で儲かるようにしてしまう事です。

もしも補助金無しでもエタノールが儲かるようになった、
つまり、ガソリン並みの値段に出来たとすると、
それは、少ない資源で効率よくエタノールを作れるようになったという事です。
そうなれば、本当の意味でのエコですし、喜ばしい事だと思います。

本当の意味でのエコが儲かるようになれば、
その方向に自然にみんな向かっていきます。
儲からないけど無理矢理やる、またはやらせる、という形のエコから、
儲かるからみんなやる、という形に変えられれば、
その環境問題は解決に大きく近づく物だと思います。

No title

ちゃんとした試算をしたわけでなく、端的に物事を捉え諸手をあげてエコだ、エコだというのが意味がわかりませんね
日本だと電気自動車がエコだ、エコだといってますが、ハイブリッドのそれとは意味が違いますよね
電気はクリーンで、排ガスが出ないと言っても、その電力を得るためにどれだけ排ガスが出ているのかをテレビでいう人は見たことがありません
仮にガソリンよりも効率がいいとしても、ガソリン車を製作するための既存のラインを電気自動車に変える、またガソリンスタンドに電気自動車用の設備を整えたりと初期費用の面を踏まえて、さしてメリットは大きく無いかと思います
環境的にメリットが生まれる前に、もっと大きな効果が得られる方法があるような気がしてなりませんね

ハルオさん

目に見えやすい部分だけに注目して、
見えないところで起こっている事を忘れてしまう辺り、
先週のリサイクルにも通ずる話ですね。

「電気はクリーンで、排ガスが出ないと言っても、その電力を得るためにどれだけ排ガスが出ているのかをテレビでいう人は見たことがありません 」

それは危ないですね。
日本の電力のほとんどは火力発電ですから、
当然排気ガスが出ています。

発電所が車と違うのは、
まとめてガスを処理出来る事だ思いますが、
それがどの程度のメリットなのかをハッキリさせないと、
ちゃんとした比較にはなりませんよね。

ちなみに、エネルギー効率や排気ガスの点では、
明らかに良いと思われるハイブリッドでも、
モーターの磁石に使われるジスプロジウムという元素を
今のペースで使い続ける事が出来ないような話があります。

炭素循環のサイクルはいじらずに(良い方向にいじれるならいじればいいですが)、石油使用によって排出された炭素を地下に埋めるのがいいと僕は思うんですけどね(以前、自分のブログで取り上げたように)。

まぁ、根本的な解決手段ではないですが。

kashさん

kashさんのブログで読んだときは知らなかったのですが、
二酸化炭素貯留という試みはすでにあるようです。(Wikipediaにも記事があります)
効率が良くなれば、発電所などの集中した二酸化炭素の排出源では、
将来、ある程度定着するかもしれませんね。
車など、分散された排出源では難しいと思われます。

ただこの記事で言いたかったのは、
一見環境に優しく見える方策も、隠れたコストを見ていくと、
実はそんなにエコではなかったりする、という事で、
それは炭素を貯留するのにも当てはまります。

例えば発電所で排出したガスから二酸化炭素を集めるために、
膨大なエネルギーが必要な事や、
一度貯留した二酸化炭素が漏れないようにする対策を立てないといけない事など、
効率の良い貯留が今の技術レベルでは難しい事情があるようです。

発電所が貯留にエネルギーを費やした場合、
その発電所が売る電気の価格はコストの上昇を反映して上がります。
価格が上がってしまうという事は、
ある1つの発電所が、独自の判断で貯留を始める、
というのはあまり現実的ではなさそうです。
(売れなくなるので)

政策で、二酸化炭素の排出権が取引されるようになれば、
(エタノールの体積毎に補助金を出すのよりよっぽど合理的な政策です)
エネルギーを費やして貯留しても利益が出る、
という状況がそのうち現れるかもしれません。

ところで、
二酸化炭素貯留がkashさんが根本的な解決ではないと思う理由はなんでしょうか?

アシュリーさんが書いているようにコストの問題があるということと、それから、人類がエネルギーの無駄使いを減らすための前向きな方法ではないというのが理由です。

kashさん

個人的な意見では、
エネルギーを消費する事自体には全く問題が無くて、
公害を起こす事においてのみ問題があると思っています。

そこの意見のずれかもしれないと思うんですが、
もし、排出される二酸化炭素が100%埋められるようになったとすれば、
それは根本的な解決だと思います。

埋めるコストは、電気の値段として反映されます。
電気が高くなる事で、消費者は今よりも節電するようになりますし、
電気を効率よく使う家電製品などがより売れて、
より開発に力が加わる事になります。

つまり、無駄使い自体を問題としても、
コストが上がる事でそれはある程度解決されます。
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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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