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物理学賞解説その9~ヒッグス機構

ダラダラと連載してきたノーベル物理学賞の解説も、今回で終わりです。
ちょっと長いです。

前回は、南部教授のオリジナルの研究、
カイラル対称性が破れる事で、π中間子と言う軽い粒子が現れるのを紹介しました。
(説明は出来てないと思うので、苦笑)
これが、素粒子物理学で自発的対称性の破れを使った最初の研究でした。

このあとの素粒子物理の理論屋たちは、
新しい対称性を見つけるたびに、これが自発的に破れたらどうなるんだろう?
と考える事で、色々なアイディアを出してきました。

物性物理と言う別の分野でしか使われていなかったものを、
素粒子物理を研究する上で必須の道具にしたのが南部教授だったわけです。

今回紹介するのは、素粒子物理で自発的対称性の破れを使った一番有名な例。
ヒッグス機構と呼ばれるプロセスです。(注)


今さらですが、素粒子物理のテーマを凝縮すると、この2つの質問になります。
1.世界にある物質は、どんな材料(素粒子)から出来ているのか?
2.その材料の間には、どのような力が働くのか?

1つ目の答えには、小林・益川理論の話で少し触れました。
今回は2つ目への答えの一部です。


知られている限り、この世界にある力の全ては、4種類の力に分類できます。

1.人間には一番馴染みがありますが、素粒子の間では実は一番弱い重力
2.電磁気力は、重力以外に目に見える力のほぼ全てを説明できます。
原子核と電子を引き寄せ合って、原子を作っているのもこの力。
3.強い力は、陽子や中性子をまとめて、原子核を作っています。
4.小林・益川理論の話で登場したベータ崩壊などのプロセスで、
素粒子を、他の素粒子に変える事が出来るのが弱い力


ヒッグス機構が発見された60年代には、この4つの力はすでに出揃っていて、
電磁気力については、実験と正確に一致する理論がありました。
ディラック、ファインマン、シュウィンガー、朝永などが作り上げた量子電磁力学という理論です。

この理論によると、
電子と陽子が引き寄せあったり、磁石が働いたりする理由は、
引き合ったり反発しあっている2つの粒子の間で、
エネルギーや運動量を持った光子(光の粒子)が交換されているから、
という事になっていました。

湯川秀樹が中間子の存在を予測したのは、
強い力も、似たように粒子の交換で起きるからでは?と考えたからです。

弱い力についてももちろん、似たようなアイディアで新しい粒子が提唱されました。


ただ、弱い力の場合には1つ問題がありました。
弱い力は、とんでもなく至近距離にある粒子の間でしか働かなかったんです。
この力が働く範囲は、なんと約1アットメートル(小数点のあとに0が17個)。

強い力の場合、中間子の交換が起こる範囲は、1フェムトメートル(小数点のあとに0が14個)。
十分短いですが、それでも弱い力の1000倍あります。

そして、力の働く範囲が1000分の1だと、交換される粒子は1000倍重くないといけない、
というのが中間子が提唱された時にはすでに分かっていた話でした。
(ハイゼンベルクの不確定性原理から分かる事です)

電磁気力を伝える光子には質量が無いのに、
なんで弱い力を伝える粒子(ウィークボソン)はこんなに重いんだろう、
というのが問題だったんです。


この問題を解決したのがヒッグス機構でした。
(実際にこの問題に応用して成功したのはワインバーグ、サラム、グラショーの3人)

電磁気力の理論には、ゲージ対称性という対称性があります。
(電荷が何も無い所から生まれない、という電荷の保存と対応している対称性です)

この対称性は、ヒッグス場というものが空間を満たすと自発的に破れてしまいます。
そして、光子とヒッグス場との間で力が働く場合、
ヒッグス場はプールの水のようになって光子の動きを妨げて、
光子に重さがあるように見えてしまうんです。

つまり、これを弱い力に使えれば、
ウィークボソンが重い事の説明が付くわけです。


ワインバーグ達が発見したのは、
電磁気力と、弱い力が元々は同じ力だったとすれば、
(同じゲージ対称性でまとめられていれば)
ヒッグス機構が使える、という事でした。

これによると、ゲージ対称性が破れる前は、
光子もウィークボソンも重さの無い粒子でした。

ところが、ある時ヒッグス場が空間を満たして、ゲージ対称性を破ってしまうと、
ヒッグス場に妨害されている粒子は重くなって、
妨害されない粒子は重さが無いまま。

そして妨害されているのがウィークボソンで、
妨害されていないのが光子だった、という事です。


今ではこの理論が正しいと思われているのはまず、
当時は2種類(W+、W-)しか発見されていなかったウィークボソンに、
3種類目(Zボソン)を予測したから。

そして、弱い力に関わる色んな現象の起きる頻度を、
とても正確に予測することが出来るからです。


残る問題はただ1つ。
ヒッグス場が本当にあるのかどうか。(大問題です)

ヒッグス場というプールが本当にあるのなら、
プールに波があるように、ヒッグス粒子という粒子が現れます。
それを発見するのが、ジュネーブのLHCの一番最初の研究テーマなんです。

ビッグバンがどうこう、じゃないんですよ。
無関係な話でもないですが。

注:
エディンバラ大学のピーター・ヒッグスがこの発見をしたのが1964年なんですが、
ブリュッセルのロベール・ブルーとフランソワ・エングレールも独自に同じ発見して、
論文が出たのは実はブルーとエングレールの方が先でした。

というわけで、Higgs mechanism(ヒッグス機構)、Higgs particle(ヒッグス粒子)ではなくて、
頭文字を取ってBEH mechanism、BEH particleと呼ぶ人もいます。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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読みました。

しかし、よく分らなかったです。理解度は何が分らないか分らないです。何度も読んで何が分らないか理解してみようと思います。本当は理解してからコメントを書きたかったのですが、時間がかかりそうなので、書きました。

オレンジさん

うーむ、この記事はちょっと上手く説明できなかったと思います。
いくつかに分けた方がいい話でした。
あとでアイディアが浮かんだら、違う形で書き直そうと思います。
分からない部分が分からないのに、
コメントしてくださってありがとうございます。
読者に伝えたい事が伝えられていないのなら、
その事を知らないと始まらないので。

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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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