スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

物理学賞解説その7~カイラル対称性

1週間間が空いてしまいました。
南部教授がノーベル賞を受賞した業績を、どうやって物理学者以外に説明するか、
色々と考えてたんですが、べらぼーに難しいです(笑)

数学的なバックグラウンドがあれば、
特別に難しい話ではないんですが、
数学抜きで説明するとなると...とにかく挑戦してみます。


自発的対称性の破れが初めて素粒子物理に応用されたのは、
南部教授のカイラル対称性の破れの研究でした。

まず、カイラル対称性とは何なのか。

カイラル(chiral)という言葉の語源は、
ギリシャ語のケール(χείρ)、手という意味の言葉です。
そこから出てきた意味は、右利き、左利きがあると言うこと。


素粒子物理と利き手に何の関係があるのか全然分からない?
そりゃそうですね。説明します。

陽子、中性子、電子などの粒子は、「スピン」と言う特性を持っています。
とても安易な言い方をすると、地球のように自転しているんです。
(電子は点粒子なのに自転してるなんてどういうこっちゃ?という謎がありますが...)

そして、進行方向に向かって、
右回りに自転しているか、左回りに自転しているかが、
その粒子の「利き手」になるわけです。


「カイラル対称性」自体が何かを説明するのは少し大変なんですが、
カイラル対称性に対応する保存則は簡単に説明できます。

それは、右利きの粒子の数と、左利きの粒子の数が別々に保存される、と言うものです。
ちょっとだけトリッキーなのが、反粒子の数はマイナスでカウントされる事。
トリッキーなのが、利き手が反対の反粒子の数は、マイナスでカウントされる事。(注)

ここで、ちょっとだけ数式を使っちゃいます。
R=(右利きの粒子の数)-(左利きの反粒子の数)
L=(左利きの粒子の数)-(右利きの反粒子の数)
とすると、RとLは何があっても変化することは無い、という事です。


例えば、左利きの陽子と、右利きの反陽子がぶつかったとします。
この状況だと、Rはゼロで、Lも1-1=0でゼロ。
カイラル対称性が守られているとすれば、
このあと何があっても、RとLはゼロのままでないといけません。

じゃあ実験の結果、右利きの陽子と、右利きの反陽子が出てくる可能性はあるでしょうか?
この結果だと、R=1、L=-1になるので、保存則を破ってしまっています。
カイラル対称性が守られているとすれば、この結果は出てくるはずが無いわけです。


じゃあ実際の所、このカイラル対称性は守られているんでしょうか?
答えはNoです。
しかも、ちょっと考えてみれば守られてないのは明らかです。

ちょっと考えてみれば、と言うのはこういうこと。
陽子が研究室の装置の中で、止まっているとします。
この陽子は右利きでしょうか、左利きでしょうか?

この陽子は自転はしていますが、
そもそも進行方向が無いので、右利きでも左利きでもありません。
そして、ちょっと力を加えてある方向に動かせば右利きに、
その反対の方向に動かせば左利きにする事が出来ます。

これで分かるのは、
静止する事が出来る粒子は、カイラル対称性を守っていないと言うことです。


カイラル対称性を守っている粒子とはどういうものかと言うと、
静止する事ができない粒子です。

静止する事ができない粒子とは...質量(重さ)の無い粒子です。
光の速度が一定、と言うのは、光の粒子(光子)に質量が無い事と密接な関係があります。
同じように、重さの無い陽子があったとすれば、カイラル対称性を守っていられるんです。


南部教授は、なぜ陽子や中性子に質量があって、
カイラル対称性を破ってしまっているのか?
という疑問に1つの答えを提示したわけですが、その話は次回。

多分、次の次でヒッグス機構の話をして終わりにします。
LHCの話とも繋げられますしね。


注:
マイナスのトリッキーさに気を取られて、
「利き手が反対」というさらにトリッキーな部分を忘れてました。
自然がほぼ完璧に守っているCP対称性が、C(中止-反粒子の変換)だけでなく、
P(鏡像変換)を同時にやらなければいけないのと通じます。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

No title

オレンジです。

>(電子は点粒子なのに自転してるなんてどういうこっちゃ?という謎がありますが...)

古典力学ではないので、天下りに説明していいと思います。量子力学は側面だけを(今のところ?)古典的にたとえ話をすることはできますが、全てを古典的に説明することはできないと思います。

>例えば、左利きの陽子と、左利きの反陽子がぶつかったとします。

たぶん間違いだと思うのですが、右利きの反陽子ですよね?

最後の方が分ったような、わからないようなという感じです。

オレンジさん

いや、スピンが古典的に説明できないのは承知してますし、
だからこそ、カッコの中だけにその事を書きました(笑)

ミスの指摘ありがとうございます。
自分で気づいてLとRの定義は直したのですが、
その後の部分に影響があるのを忘れていました。

最後のほうは、
実はmixiの物理コミュで関係した質問があって、
自分がここでよりも詳しく答えました。
出来れば「みんなに相談」スレの359番の質問から読んでみてください。

No title

スピンが古典的に説明できないことを分っていることは分ってましたが、説明しにくそうに感じたので。余計なお世話でしたね。ごめんなさい。

>最後のほうは、
実はmixiの物理コミュで関係した質問があって、
自分がここでよりも詳しく答えました。
出来れば「みんなに相談」スレの359番の質問から読んでみてください。

とりあえず、メモにコピペしたので、読んでみます。



オレンジさん

スピンに関して、ファインマンのこう言う話があります。
(ご存知かもしれませんが)

ファインマンは、
大学1年生のレベルで説明出来ないのなら、
それは本当に深い意味で理解していないからだ、
という意見を持っていました。

彼はスピンをどうやって説明しよう、と考えたのですが、
どうも大学1年のレベルでは説明出来そうに無い。
というわけで、自分はスピンを本当の意味で理解してはいないんだろう、
という結論に落ち着いたらしいです。

それだけの話なんですが(笑)

No title

アシュリーさん。

>ファインマンは、
大学1年生のレベルで説明出来ないのなら、
それは本当に深い意味で理解していないからだ、
という意見を持っていました。

これは知ってます。

>彼はスピンをどうやって説明しよう、と考えたのですが、
どうも大学1年のレベルでは説明出来そうに無い。
というわけで、自分はスピンを本当の意味で理解してはいないんだろう、
という結論に落ち着いたらしいです。

 これははじめて聞きました。僕はこの話を聞いて、正確にはファインマンがスピンを理解していないのではなくて、ファインマンの時代にはスピンは大学1年生に説明できるほど理解できていなかったと思ったのですが、どうなのでしょうか。今でもスピンの理解はファインマンの時代と変わらないのでしょうか。
 もし、アシュリーさんがスピンについて大学1年生にわかるように説明できるのならば、スピンの説明についてはファインマンを超えたといえるかもしれないですね(笑)。
 
 ところで、カイラル対称性の最後の部分は理解できました。ありがとうございました。

オレンジさん

Feynman lecturesのForewardにありました。

Feynman was once asked by a Caltech faculty member to explain why spin 1/2 particles obey Fermi-Dirac statistics. He gauged his audience perfectly and said, "I'll prepare a freshman lecture on it." But a few days later he returned and said, "You know, I couldn't do it. I couldn't reduce it to the freshman level. That means we really don't understand it."

スピン自体ではなくて、スピンと統計性の関係の事だったようです。
この話には続きがあって、86年のDirac lectureでこれの説明をしたそうです。
(読んでいないのでFreshman levelかどうかは判断できないのですが)

それ以前の、点粒子でも自転しているという部分は、
ただ受け入れるしかないんでしょうね。
FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

ブログ内検索
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
リンク
RSSリンク
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。