物理学賞解説その5〜小林・益川理論
コメントが無いので、どのレベルに合わせたらいいのか全く分かりません。
期待している人が1人でもいるかも知れないので、3人の業績を一通り解説しますが、
自己満足に限りなく近い状態です。
分からない部分があったら、書き手の問題だと思って質問してください。
ここまでは、
「その1〜対称性」、「その2〜反物質」、「その3〜微妙なズレ」、「その4〜クォーク」
やっとこさ、小林教授、益川教授の業績に辿り着けます(苦笑)
陽子や中性子が、さらに小さいクォークで出来ていることを前回説明しました。
陽子はアップというクォークが2つ、ダウンというクォークが1つ、
中性子はアップが1つ、ダウンが2つで出来ています。
中性子を放っておくと、こんなことが起きます。

↑この図では、下から上に向かって、時間が流れています。
最初にあるのは中性子(n)が1つだけ。
それがある時、中性子の中にあるダウン(d)の1つが、
アップ(u)1つと、Wボソンという粒子に分解してしまいます。
アップの方は、前からあったアップ1つとダウン1つと一緒になって、陽子になります。
Wボソンは、さらに電子(e)とニュートリノ(ν)に分解して終わり。
結果的には、
中性子 → 陽子 + 電子 + ニュートリノ
となったわけです。
このプロセスは、ベータ崩壊といわれていて、
これで発射される電子(ベータ線)は放射線の1つです。
(物理以外だと、考古学や地質学の「年代測定」は、ベータ線を利用してます)
なぜこの話をするかと言うと、
この世には、ダウンクォークをアップクォークに変えるプロセスがある、
という事を見せたかったんです。
似たように、ストレンジクォークをアップクォークに変えるプロセスもあります。
ただ、クォーク理論が発表された頃すでに分かっていたのは、
ストレンジよりも、ダウンの方がアップに変わりやすい、という事。
これを説明したのが、ニコラ・カビボの「カビボ角」と言うアイディア。
大まかに説明すると、こういう事です。
ダウン担当の人と、ストレンジ担当の人がいて、
それぞれ、射撃の的に矢を当てると、
担当のクォークがアップに変わるとします。
ダウン担当の人は、的の北側から、
ストレンジ担当の人は、的の東側から弾を撃ちます。
この際、例えば的が真北を向いていたら、

ダウン担当の人にとっては、一番当てやすいコンディションですが、
逆に、ストレンジ担当の人は絶対に的に当てられません。
この設定の場合、ストレンジクォークがアップに変わる事はありえないわけです。
的に角度を付ければ、2人とも当てられるようになります。

この角度の付け具合で、
ダウンとストレンジが、それぞれアップに変わる確率が変わってくるわけ。
これだけ言うと当たり前のような話ですが、
このたとえ話で大事な部分は、前提のところ。
ダウンがアップに変わるのも、ストレンジがアップに変わるのも、
同じ射撃の的に弾が当たった時に起きる、という前提です。
「的に当たればアップに変わる」、というだけの話なら、
ダウン用の的と、ストレンジ用の的が別々でも良かったわけですよね。
でもカビボは、的は1つしかないと言う前提で話を進めたんです。
カビボが言いたかったのは、
ダウンがアップになるのと、ストレンジがアップになるのは、
実は同じプロセスなんだけど、
ハンデが付いてるから、違う確率で起こってるように見えるんだ、という事なんですね。
64年の実験で、CP対称性が破れている事が見つかった後、
物理学者たちは、この対称性がどういう仕組みで破れているのか、
色んなアイディアを出していました。
そんな中、この問題に挑戦した小林誠と益川敏英が注目したのが、このカビボ角でした。
ダウン担当の人が北から撃って、ストレンジ担当の人が東から撃っているわけだけど、
もう1人、真上から撃つ担当の人がいたらどうなる?と考えたんです。
この辺の詳しいところは、数学無しではどうにも説明できないのでしませんが、
ダウン、ストレンジに続いてもう1つ、アップに変われるクォークがあれば、
CP対称性を破る事ができる、という事を、この2人が発表したんですね。
説明をこれまた省きましたが、クォークの種類は対(世代といいます)になってます。
アップとダウン、チャームとストレンジ、トップとボトム。
小林・益川理論が発表された74年に知られていたのは、
アップ、ダウン、ストレンジの3つで、
チャームの存在は他の人が予測していました。
小林・益川理論が予測したのは、3世代目のクォーク、トップとボトムの存在でした。

(発見されている素粒子の全て。紫の部分がクォーク)
2年後、ボトムが発見されて、トップの探索が始まりました。
トップも90年代になってやっと見つかって、
クォークが6種類あるという、2人の予測は当たっていた事が分かったわけです。
CP対称性が破れる仕組みも、
その3で紹介した、Belleという実験などで検証されて、
小林・益川理論で説明が付くようだ、と分かりました。
30年以上前の業績が、なぜ今年のノーベル賞になったかと言うと、
実験での検証が、最近になってやっと出来るようになった、という事があったんですね。
ちなみに、3世代クォークがある場合のハンデの付け具合は、
単にカビボ角のように1つの数字ではなくて、
「カビボ・小林・益川(CKM)行列」といわれるもので決まっています。
CKM行列は、素粒子物理学者はみんな名前を知っているもので、
小林と益川の名前も、CKM行列に自動変換されるようになっていました。
なので、今回のノーベル賞の発表があった時、
CKM行列でノーベル賞なのなら、なんでカビボは貰えなかったのか?
というのが最初のリアクションの人が多かったようです。
公式の受賞理由から言うと、
カビボ角は、「CP対称性の破れ」とは関係ないので、
小林・益川が受賞して、カビボが受賞しなかったのは理解できます。
ただ、最初のアイディアを出したのがカビボだったのも事実。
残念ながら、後々まで議論を呼ぶ受賞の1つになってしまうでしょうね。
期待している人が1人でもいるかも知れないので、3人の業績を一通り解説しますが、
自己満足に限りなく近い状態です。
分からない部分があったら、書き手の問題だと思って質問してください。
ここまでは、
「その1〜対称性」、「その2〜反物質」、「その3〜微妙なズレ」、「その4〜クォーク」
やっとこさ、小林教授、益川教授の業績に辿り着けます(苦笑)
陽子や中性子が、さらに小さいクォークで出来ていることを前回説明しました。
陽子はアップというクォークが2つ、ダウンというクォークが1つ、
中性子はアップが1つ、ダウンが2つで出来ています。
中性子を放っておくと、こんなことが起きます。

↑この図では、下から上に向かって、時間が流れています。
最初にあるのは中性子(n)が1つだけ。
それがある時、中性子の中にあるダウン(d)の1つが、
アップ(u)1つと、Wボソンという粒子に分解してしまいます。
アップの方は、前からあったアップ1つとダウン1つと一緒になって、陽子になります。
Wボソンは、さらに電子(e)とニュートリノ(ν)に分解して終わり。
結果的には、
中性子 → 陽子 + 電子 + ニュートリノ
となったわけです。
このプロセスは、ベータ崩壊といわれていて、
これで発射される電子(ベータ線)は放射線の1つです。
(物理以外だと、考古学や地質学の「年代測定」は、ベータ線を利用してます)
なぜこの話をするかと言うと、
この世には、ダウンクォークをアップクォークに変えるプロセスがある、
という事を見せたかったんです。
似たように、ストレンジクォークをアップクォークに変えるプロセスもあります。
ただ、クォーク理論が発表された頃すでに分かっていたのは、
ストレンジよりも、ダウンの方がアップに変わりやすい、という事。
これを説明したのが、ニコラ・カビボの「カビボ角」と言うアイディア。
大まかに説明すると、こういう事です。
ダウン担当の人と、ストレンジ担当の人がいて、
それぞれ、射撃の的に矢を当てると、
担当のクォークがアップに変わるとします。
ダウン担当の人は、的の北側から、
ストレンジ担当の人は、的の東側から弾を撃ちます。
この際、例えば的が真北を向いていたら、

ダウン担当の人にとっては、一番当てやすいコンディションですが、
逆に、ストレンジ担当の人は絶対に的に当てられません。
この設定の場合、ストレンジクォークがアップに変わる事はありえないわけです。
的に角度を付ければ、2人とも当てられるようになります。

この角度の付け具合で、
ダウンとストレンジが、それぞれアップに変わる確率が変わってくるわけ。
これだけ言うと当たり前のような話ですが、
このたとえ話で大事な部分は、前提のところ。
ダウンがアップに変わるのも、ストレンジがアップに変わるのも、
同じ射撃の的に弾が当たった時に起きる、という前提です。
「的に当たればアップに変わる」、というだけの話なら、
ダウン用の的と、ストレンジ用の的が別々でも良かったわけですよね。
でもカビボは、的は1つしかないと言う前提で話を進めたんです。
カビボが言いたかったのは、
ダウンがアップになるのと、ストレンジがアップになるのは、
実は同じプロセスなんだけど、
ハンデが付いてるから、違う確率で起こってるように見えるんだ、という事なんですね。
64年の実験で、CP対称性が破れている事が見つかった後、
物理学者たちは、この対称性がどういう仕組みで破れているのか、
色んなアイディアを出していました。
そんな中、この問題に挑戦した小林誠と益川敏英が注目したのが、このカビボ角でした。
ダウン担当の人が北から撃って、ストレンジ担当の人が東から撃っているわけだけど、
もう1人、真上から撃つ担当の人がいたらどうなる?と考えたんです。
この辺の詳しいところは、数学無しではどうにも説明できないのでしませんが、
ダウン、ストレンジに続いてもう1つ、アップに変われるクォークがあれば、
CP対称性を破る事ができる、という事を、この2人が発表したんですね。
説明をこれまた省きましたが、クォークの種類は対(世代といいます)になってます。
アップとダウン、チャームとストレンジ、トップとボトム。
小林・益川理論が発表された74年に知られていたのは、
アップ、ダウン、ストレンジの3つで、
チャームの存在は他の人が予測していました。
小林・益川理論が予測したのは、3世代目のクォーク、トップとボトムの存在でした。

(発見されている素粒子の全て。紫の部分がクォーク)
2年後、ボトムが発見されて、トップの探索が始まりました。
トップも90年代になってやっと見つかって、
クォークが6種類あるという、2人の予測は当たっていた事が分かったわけです。
CP対称性が破れる仕組みも、
その3で紹介した、Belleという実験などで検証されて、
小林・益川理論で説明が付くようだ、と分かりました。
30年以上前の業績が、なぜ今年のノーベル賞になったかと言うと、
実験での検証が、最近になってやっと出来るようになった、という事があったんですね。
ちなみに、3世代クォークがある場合のハンデの付け具合は、
単にカビボ角のように1つの数字ではなくて、
「カビボ・小林・益川(CKM)行列」といわれるもので決まっています。
CKM行列は、素粒子物理学者はみんな名前を知っているもので、
小林と益川の名前も、CKM行列に自動変換されるようになっていました。
なので、今回のノーベル賞の発表があった時、
CKM行列でノーベル賞なのなら、なんでカビボは貰えなかったのか?
というのが最初のリアクションの人が多かったようです。
公式の受賞理由から言うと、
カビボ角は、「CP対称性の破れ」とは関係ないので、
小林・益川が受賞して、カビボが受賞しなかったのは理解できます。
ただ、最初のアイディアを出したのがカビボだったのも事実。
残念ながら、後々まで議論を呼ぶ受賞の1つになってしまうでしょうね。










