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ツタンカーメン

もう先々週になりますが、彼女と一緒に、サンフランシスコのデ・ヤング美術館に来ているツタンカーメン展を見に行きました。

数年前に一度アメリカに来て、その時はシカゴに見に行こうと思ったんですが都合が合わず断念。一度ロンドンに行ったのが、またアメリカに来たんですね。

有名なツタンカーメンのデスマスクなどは、エジプトの外に出す事が出来ないという事なんですが、それでもツタンカーメンの墓から発掘された遺品や、同じ第18王朝の王女の棺桶など、値が張るなりに色々と見られる展示でした。


西洋で使われているアルファベットは、エジプトの象形文字ヒエログリフが起源だとされています。漢字からひらがな、カタカナが生まれたように、表意文字が表音文字に変化したというのが面白いところ。

ヒエログリフを解読したのは、ジャン=フランソワ・シャンポリオン。彼は子供の頃からの語学の天才だったんですが、ギリシャ語とエジプト語が併記されたロゼッタストーンからヒエログリフの意味を明らかにしたのは、言語の習得というよりは暗号の解読。

そうやって解読した文字から、古代エジプトの民俗風習が詳しく分かるようになった、というのがさらに面白いです。


ヒエログリフによって記録されている時間の長さもすごいものです。

ツタンカーメンは、紀元前14世紀の王。ギザのピラミッドは紀元前27世紀なので、ツタンカーメンが生まれた時には、ピラミッドは古代遺跡だったわけ。時間の長さだけで比較すると、法隆寺のようなものです。(今までの1300年の方が、紀元前の1300年より大きな変化があったのは確かですが)


考古学の面白いのは、まず、生活して行くための色々な問題、パズルを工夫して解いた昔の人達がいて、そのパズルがどういうものだったのか、そして昔の人がどうやって解いたのかを、状況証拠から推理する考古学者がいる、つまり、2重のパズルになっているところだと思っています。だから個人的には、王家のきらびやかな装飾品、よりも、実際の生活がどういうものだったのか分かるものの方が興味があるんですね。

それでも、ツタンカーメンの場合は、墓が荒らされていなかった事だけでなく、パズルとしても価値のある部分があるようです。父のアメンホテプ4世が宗教改革を行って、国を大混乱に陥らせたところで、10歳に満たないツタンカーメンが即位したと。ツタンカーメンは、父の宗教を捨て、昔ながらの宗教に戻したんだとか。

実際のところ、どういった経緯でこのような判断がなされたのか、ツタンカーメン本人にどれだけの権限があったのか。想像の膨らむストーリーなのは確かです。
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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

物理ネタ

先日、友人のパーティーで会った知らない人に、宇宙核物理とはなんぞや、と説明するために、この質問をこちらから投げかけました。

今地球上にある、炭素ってどこから来たの?

最初からあった?それともどこかで作られた?だとしたらどこで?と疑問が続きます。(アイディアがあったらコメントどうぞ。間違っていても何も恥ずかしくありません。100年前は誰も知らなかった事です。


以前、このブログで少し取り上げた話なんですが、もう一度ちゃんとやってみようかな、と思ってます。


他で面白そうなのはニュートリノネタかなぁ。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

チェス

囲碁は相変わらず、1日1局くらいのペースで打ってるんですが、最近ちょっと、チェスを再開してしまいました。そんな暇ないはずなのに(汗)

チェスは、もう5、6年はまともに打ってなかったんですが、それでもそんなに弱くはなっていませんでした。


何手か先まで読まないといけないような激しい攻防などになると、昔は見えていたはずの好手を見落としてしまったりするんですが、好ましい陣構えなどは覚えているようで、それなりに良い体勢に持っていけるんですね。

少しまた練習したら、以前と同じ強さに戻れそうな気さえします。


チェスの場合、1手に数秒、という時間制限でも、そんなに酷くない手が打てるんです。囲碁では最低でも数十秒ないと無理。

そして、お酒が入っていてもチェスはそんなに弱くならない。囲碁はボロボロ(笑)

元々分かっていることですが、囲碁の方が頭の色々な部分を使っているんだと思わされます。


以前チェスをしていた時は、強い人の対局を見て、学習しよう、と言うのはあんまりしなかったんです。大体の局面では、地道に考えて行けば最善手が見つけられるのと、こういう局面ではこういうプランを立てるべき、というのが体系化されているからです。自分で考えるだけで結構行けるんですね。

囲碁の場合は、一つ一つの局面を何手も先まで読み切って最善手を見つけると言うのはかなり難しいので、色々なパターンを見て、頭の中にインプットしないといけません。それなりに強くなってくると、これをする一番の方法は、強い人の対局を見て研究する、という事になります。


囲碁の強い人の棋譜を見るのは、どこから当たろうかな、とぼんやりと思ってる中で、先週、彼女と行った古本屋でホセ・ラウル・カパブランカ(1920年代の世界チャンピオン)の棋譜集を見つけて、チェスで昔の人の対局を見るのも良いかな、と思いました。

誰のを見るかは決めてないんですけどね。

まずは名局と言われる物をいくつか見て、その中で気に入った選手を選ぶことにするかも知れません。候補としては、フィッシャー、カスパロフ、カパブランカ、アレヒン辺り。みんな世界チャンピオンです。

テーマ : ボードゲーム
ジャンル : ゲーム

利き手

今度は普通に利き手の話。

面白い記事がNew York Timesにあったので。

"It’s Not Political, but More Canadians Are Lefties"

野球のように、アイスホッケーにも右打ちと左打ちがあります。主にシュートするのが体の右からか、左からか、という区別。

スティックの先っぽも、この利き手に合わせて曲がってるんですが、なんと、カナダでは左打ちスティックの方が売れて、アメリカでは右打ちスティックの方が売れるんだとか。(記事のタイトルは、カナダの方が政策が左寄りとされるのにかけたダジャレ)


なんでカナダが左寄りで、アメリカが右寄りなのかは、自分にはどうしょうもない問題なので置いておくとして、気付く事が他にもあります。

右打ちと左打ちがほぼ五分五分だという事から分かるように、ホッケーの利き手は、ものを書いたりするような利き手とはあまり関係が無さそうだという事。十分練習すれば、どちらでも打てるようになれるようです。実際、左利きだけど、ホッケーは右打ち、という人が2人知り合いにいました。


野球の打撃も、スイッチヒッターなどがいるように、練習すれば反対側でも打てるようになるものですが、それでも右打ちの方が多いんです。(参考)野球よりホッケーの方が、利き手の反対側で打つのが簡単、という事でしょう。


テニスの場合、片手でフォアハンドを打つのが利き手。右利きの選手が、バックハンドを両手で打つモーションは、野球やホッケーの左打ちのモーションと似ています。それを思えば、野球とホッケーで、反対側の手で打つ事がそこまで難しくないのは不思議ではないです。

そのテニスだと、面白い例がトッププレイヤーで2人います。

1人は、ラファエル・ナダル。テニスは左打ちですが、彼は本来右利き。右利きだけど、左もそれなりに器用だという事に伯父トニ・ナダルが気付き、左打ちで練習させるようにしたそうです。

これは、左打ちの選手が少ない事から、相手に取っては見慣れないショットを打てる、というアドバンテージを見てのことでした。

逆のケースが、マリア・シャラポワ。彼女は両利き。ですが、父ユーリは、彼女を右打ちの選手に育てました。なんでそうしたのかは…謎です(笑)左利きの方が良かったのでは、と思います。

彼女は今でも、バックハンドに追いつけない時に苦し紛れに左手のフォアハンドを打つ事があります。


サッカーの利き足なども、練習すれば両利きに近づけることは可能ですが、練習で両利きになった、という話をほとんど聞かないものもあります。すぐに思いつく例は、オーバーハンドで投げるモーション。

野球の投手は、ナダルが左打ちになったのと同じ理由で、左投げが少ないのなら左投げになりたいはず。簡単に切り替えられるものなら、右投げと左投げの投手の数はほぼ同じになるはずです。ですが、両投げと言う選手はほぼ皆無ですし、右利きなのに左投げになった、と言う話も聞きません。左投げの投手は普通に左利きの人に限られるので、実際に稀少価値があるんです。(注)


ナダルも、投げるモーションに似ているサーブに長年苦労していました。これも、利き手でない方の手で、オーバーハンドで投げる、と言うのが難しい事の現れかと思われます。


野球の場合、左打ちの選手は一塁に近い上に、バットを降った勢いで一塁に向かって走り始められるので、イチローのように右投げ左打ち、と言う選手が多くいます。

逆に、左利き、左投げなら、わざわざ右打ちになる理由はあまり無いんです(スイッチヒッターになる理由はあります)。左投げ右打ち、と言う選手はほとんどいません。

例外の1人が、去年殿堂入りしたリッキー・ヘンダーソン。子どもの頃友達と野球をしている時、他がみんな右打ちだったので、こうやるものなんだと思って右打ちになったとか(笑)


こうダラダラ書いてみると、利き手については色々気にしているんだなぁ、と分かりますね。自分は右利きなんですが、左利きの女の子を見るとグッと来るので(笑)スイッチヒッターが好きだとも以前書きました。

それはいいとして、利き手のどれくらいが遺伝で決まるのか、なぜ右利きの方が多いのか、面白い問題です。

(注)
野球選手の投げる手に関しては、1つ注意点があります。内野の二塁手、三塁手、遊撃手の3つのポジションは、打球を取って一塁に投げやすくするために、右投げでないといけないんです。捕手もほぼ全員右投げです。(捕手が右投げの理由は、実際のところ不明)

テーマ : スポーツ全般
ジャンル : スポーツ

左利きの宇宙?

お久しぶりです。ほぼ1週間、彼女さんが遊びに来ていまして更新お休みでした。

…と、ブログに戻ってきてみると、拍手の数がやけに増えてるんですね。1週間で40個。同じ記事にいくつも入ってるんで、新手のスパムかな?とも思ったんですが、拍手は出し手が分からないからスパムとしては全く意味がない(笑)

古い記事でも、拍手をして頂けるくらい感心(?)してもらえたなら、どういう風な感想を持ったのか、コメントしてもらえるとさらにありがたいです。


更新を休んでいる間に、面白い講義を聞いてきました。アミノ酸の「利き手」(キラリティ)についての話です。

生化学をかじった人なら知っているかと思うんですが、アミノ酸の分子には、右利きと左利きのものがあります

chirality

アミノ酸の構成要素は、中心になる炭素(C)と、それにくっつく水素(H)、アミノ基(NH2)、カルボキシル基(COOH)まではどれも一緒。アミノ酸の種類を決めるのは、炭素にくっついているもう1つの要素(R)です。そしてこの構成要素の繋がり方には2通りあって、お互いが鏡で映しあったような関係にあるわけです。便宜上、片方の繋がり方を右利き、もう片方を左利きを呼んでいるわけです。


アミノ酸を、普通の方法で人工的に合成すると、右利きの分子と左利きの分子が半々出来上がります。

でも地球上の生き物の中を見ると、ほぼ全てのアミノ酸は左利きなんです。(セリンと言うのが例外らしいです)


問題なのは、この地球の生物内のアミノ酸の利き手は、いつ、どうやって決まったのか

スタンダードな答えは、今の地球上生物全ての先祖にあたる何者かがアミノ酸を作り始めた時に、たまたま左利きのアミノ酸を作った、というもの。


生き物の体中で色々な働きをする酵素は、アミノ酸から出来ています。酵素の材料が、左利きのアミノ酸だけだった場合や、右利きのアミノ酸だけだった場合は、右利きと左利きが混ざっている場合よりも酵素の働きがずっと強くなるんだそうです。この事だけから言うと、右利きのアミノ酸を使う生き物がいてもおかしくはないわけです。

でも、片方の利き手のアミノ酸を作るプロセスを使える生物の子どもには、同じプロセスが遺伝によって伝わります。たまたま、地球上の生物の祖先は、右利きではなく、左利きのアミノ酸を作る生物だった、という事なら、今の生物がみんな左利きのアミノ酸を使うことが説明出来るんです。


ただ、この主流の答えを疑う研究者達もいます。先週、講義していったのは、そんな一人。

地球上のアミノ酸が左利きなのは、地球のアミノ酸は宇宙から来たもので、宇宙で作られるアミノ酸は左利きの方が多い、という説を検証しようとしているんです。


こういった仮説を立てる人がいる理由には、マーチソン隕石の発見があります。

オーストラリアのマーチソンという町の近くに落ちたこの隕石には、アミノ酸が含まれていました。そしてそのアミノ酸は、左利きの方が多かったんですね。(100%ではありません)

地球上にあったアミノ酸が紛れ込んだのでなければ、これは、地球外のどこかでアミノ酸が作られて、しかも利き手が偏っていたという事になります。どうやってそういう事が起きるのかは、まだ確かな答えの無い謎なんです。

地球上の生命が、どういう風に始まったのか、というのも、確かな答えが無い謎。2つ大きな謎があると、繋げて考えたくなるのが科学者の癖です。地球上の生物は、宇宙から来たアミノ酸から生まれた、という説を唱える人が出てきたのは不思議ではありません。


個人的な印象だけ言うと、今の地球上のアミノ酸がほぼ左利きだけ、と言うのは、生物が生まれる前の地球上のアミノ酸に付いてはほとんど何も教えてくれない、と思います。

なぜなら、一度生物が生まれてしまうと、その生物がたまたま使っていたアミノ酸の利き手が、一気に増殖してしまうから。元の利き手の割合がどんなものでも、一度左利きのアミノ酸を使い、作れる生物が増殖すると、以前の割合の痕跡は無くなってしまうんです。

これの例外は、生物の誕生には、アミノ酸の割合が最初から大きく偏っていないといけない、と言う場合。この場合、地球上のアミノ酸の割合は何らかのプロセスで元から偏っていて、そのおかげで生物が生まれた、と言う事になります。もしかするとその偏りは、地球外で作られたアミノ酸にあるものだったのかも知れません。


この問題にしろ、生命誕生の謎にしろ、生物学、化学、物理学が全部絡んでくるなかなか難しい問題です。しかも、答えをどうやって検証すればいいのか、という事も考えると、面白いけれど、仕事でやりたいとは思いません。間違っていても間違っていると分からないわけで、いつまでも突き進んで行っちゃうんですから。


ところで、地球上のアミノ酸の割合は、一昨年、南部教授がノーベル物理学賞を受賞した「対称性の自発的破れ」の面白い例です。いかにも物理学者の興味をそそる問題なのかも。

テーマ : 宇宙・科学・技術
ジャンル : 学問・文化・芸術

Super Bowl XLIV

コルツ17-31セインツ

一言で言ってしまうと、クリーンな試合でした。

両方とも小さめの街がホームで、嫌われる理由の少ないチーム。特にセインツは、カトリーナ以来のニューオーリンズ復興のシンボルという事で、下手に批判すると人でなし呼ばわりされそうな感じ(笑)アクのある選手は、セインツのジェレミー・ショッキーくらい。

試合を左右するようなペナルティーは無かったですし、目立ってラフなプレーもほとんど無し(ショッキー関連くらい、笑)。ターンオーバーは試合のキーになったインターセプションだけ。

パスも冗談のように良く決まりましたしね。レシーバーがパスを落とすシーンがあまりに少なくて、全部覚えてる気がします。

ハーフタイム直後のまさかのオンサイドキックと、ペイトンの投げたインターセプション→タッチダウンが記憶に残るプレーでしょうね。


ニューオーリンズといえば、マルディ・グラ(カーニバル)。今年は、2月16日なんですが、もうニューオーリンズはマルディ・グラが始まったような騒ぎみたいですね。

ま、ふさわしいニューオーリンズのジャズでもどうぞ→リンク(ページ右上で再生)


そうそう、ハーフタイムのThe Who、ベタにしても良かったですね。ジャネット・ジャクソンの一件以来、とっても安全なハーフタイムショーです。

ベストコマーシャルは、これ。

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世紀の大発見?

ここまで、CDMSという実験が、どうやってダークマター候補のWIMPという粒子を探知しようとしているのか書いてきました。(前回

果たしてどういう結果がでたのか、去年の12月に発表された話を今回します。


音とイオン化を同時に測るCDMSの探知機でどういった事が起これば、WIMPを観測したと思われるのか、前回のまとめをもう1度書いておきます。

探知機の内部で起こった、イオン化の信号が小さ目の衝突、が見つかれば、WIMPの衝突だと思われる


CDMSは、以前写真を載せた探知機を30個、ミネソタ州スーダンの廃坑に設置しました。2006年に始まって、約600kg日、装置が作動していたとのこと。(探知機のターゲットの質量と、走らせていた時間を掛け合わせたものです。作業量を表す際に、「人時」などというのと同じようなものです)

30の探知機が、音とイオン化をピックアップした回数は膨大なものです。

Blind
点1つ1つが、探知機に引っかかった衝突。

このグラフの横軸は、衝突の際に伝わったエネルギーの大きさで、縦軸は、イオン化の信号の強さです。

隠されている部分が、WIMPの衝突が入ると思われる部分。イオン化の信号の弱いところです。


こういった、大量のノイズを取り除く事が必要な実験で大事なのは、ノイズを取り除き終わるまで、欲しいデータの部分を見ない事です。なぜかというと、欲しいデータの部分がどうなっているのか分かっている場合、ノイズを取り除く条件を微調整して、欲しい結果を得る事が可能かもしれないからです。

実験をしている人達は当然、WIMPを発見したくてしたくてしょうがないわけです。そういう人達が、WIMPの衝突があるかもしれない部分のデータを見ながら、「これはノイズだけど、これはノイズじゃない」というのをやってしまうと、本当はWIMPの証拠が無いのに、ある、という結論を発表してしまうかもしれない。こういったバイアスを避けないといけないんですね。さらに言うと、バイアスを疑われるような事もしないように心がけないといけません。


CDMSでも、こういった、「ブラインド」での分析が行われました。

ノイズとして除去されたのは、探知機の中で2回衝突を起こしたと思われるものや(WIMPはほとんど反応しないはずで、同じ探知機の中で2回衝突する可能性は極端に低いので)、表面近くで起こったと思われる衝突などです。

隠れていない部分のデータから、出来るだけノイズを除去した後も、WIMPではない衝突がいくらか残っている事が分かりました。そして、もしWIMPの衝突が無くても、平均して0.6回の衝突が、隠された部分に残っている、つまり、WIMPの衝突のように見えてしまう、というのが、分析の結果でした。


ということは、隠れた部分を開けてみて、1個衝突があるかないか、と言うのは、WIMPとの衝突が観測出来なかった場合。逆にもし、5、6回も衝突があったのなら、これはWIMPの衝突があったという強い証拠になります。

実際の結果はと言うと…


Result

2つ、WIMPの衝突のようなものが観測されたんです。

これは、相当微妙な所です。

WIMPがなかったとしても、WIMPの衝突のようなものが2回以上観測される確率は、23%あるんだそうです。だから、2つともWIMPとは全く無関係かもしれません。でも、両方ともWIMPの衝突なのかもしれない。

まだ明かな発見ではないけれど、もう少しなのかもしれない、と言うのが、大方の物理学者の見方だと思われます。


じゃあ、これからダークマターの実験はどうなるのか。

もっと大きい探知機を、というのが、当面の課題です。

CDMSのように、超伝導体を使うような実験は、大きくするのが比較的難しいものです。大きくしやすいものとして、液状のキセノンやアルゴンを使った実験があります。液体の実験では、今、100kg級の探知機での実験が進んでいて、1トン級の探知機がそのうち現れるかもしれません。

ただ、キセノンなどを入手するコストを考えると、数トンがリミットかもしれない、というような話です。カミオカンデは、3000トンもありますが、あれは水ですからね。超純水とは言え、キセノンやアルゴンよりはずっとずっと安いんです。


CDMSの結果が、WIMP発見の一歩手前だと、物理学者としては思いたいところです。でももしかすると、地球の研究室で、WIMPと普通の物質の間に起こる衝突が観測出来る日は来ないかもしれません。

この、先が見えないのが、研究の面白さの1つです。

テーマ : 物理学
ジャンル : 学問・文化・芸術

WIMPの資格

CDMSが、探知機の中で衝突が起こったことをどう観測するのかは前回書いた通り。でも、音やイオン化に繋がる衝突を起こすのは、観測したいダークマター、WIMPだけではありません。

宇宙線に衝突されるのを防ぐために、地下深くに潜ったわけですが、地中にも色々な放射性物質があります。放射線の種類としてまず挙げられるのが、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の3つ。どれも、不安定な原子核が、もっと安定した他の原子核に姿を変える際に放出するものです。

アルファ線は、不安定な原子核が分裂して、ヘリウムの原子核(陽子2つと中性子2つ)を吐き出したもの。

ベータ線は、電子

ガンマ線は、光(光子)、ですが、X線よりもさらに波長が短く、エネルギーが高いものです。

そして実は、ダークマターの実験ではこの3つよりも厄介になるのが、中性子です。中性子は、名前の通り電荷を持たない(中性)ので、下手をすると物質の中をスルリと通り抜けてしまいます。さらに、探知機の中で衝突した場合に、WIMPと同じ様に、原子核と衝突するんです。


こういったWIMP以外の粒子を避けるにはまず、シールドを張るのが最初の策です。WIMPは普通の物質とはほとんど反応しないので、シールドがあってもWIMPは関係無く通り抜けてきます。(ニュートリノの実験でも似たような事が言えます)

Shielding
↑銅で出来た丸いのが、昨日写真を載せた冷却装置(探知機はその中)。その周りの白い物が、ポリエチレン。さらに周りに、鉛がレンガのように積まれてます。ポリエチレンも鉛も、中性子を吸収するのに特に適した物質です。


これだけのシールドを張っても、ベータ線やガンマ線はいくらか通り抜けてきます。いくらか、でも、大変な事です。WIMPの衝突は、何年か観測しても、数回あるかないかだと思われていますから。

WIMPの衝突と、シールドを通り抜けてきた電子や光子との衝突を、区別出来ないといけないわけです。


ここでポイントになるのは、ベータ線やガンマ線が探知機の中でイオン化を起こすためには、探知機の中の原子核にぶつかるのでは無くて、その周りの電子にぶつからないといけない事です。電子は原子核と比べるとずっと軽いですし、光子には質量がありません。なので、電子や光子が原子核とぶつかっても、原子核はビクともしないんですね。

こういった放射線でも、電子に当たれば、電子を弾きだして、イオン化を起こすことが出来ます。


というわけで、探知機の中で音とイオン化が同時に起こる現象は、WIMPの原子核との衝突、と、ベータ線やガンマ線の電子との衝突、の2種類になります。

実は、CDMSが音とイオン化を両方計測しているのは、この2つを区別するため、です。

Signal-Noise

これがそれを示したグラフ。本番の実験を始める前に、装置の調整のために試しにベータ線、ガンマ線、中性子を当てた結果です。

まず、赤い点は、ガンマ線が電子に衝突した場合で、青い丸が、中性子が原子核に衝突した場合。縦の軸が、イオン化の信号の強さ

赤い点が上のほうに固まっていて、青い丸が下のほうに固まっているのは、ガンマ線が電子に当たった場合は、中性子が原子核に当たった場合よりも、電子が多く弾き出される、という事です。

WIMPを探す際には、電子が沢山吐き出される衝突は無視して良い、という事です。


次に、黒い点が何かと言うと、これはベータ線が電子に当たった場合。黒い点の中には、イオン化の信号が小さい場合もあって、中性子が当たったのと混同してしまいそうです。

これは、電子の衝突が、探知機の表面近くで起こるからだそうです。近くにある表面に影響を受けてしまうんですね。(なぜイオン化が減るのかは、ちょっと自分には説明出来ませんが、周りに他の物質がある場合とない場合で、実験結果が変わるのは不思議ではないと思います)

ベータ線の衝突と、原子核への衝突を区別するために役に立つのが、音の波形

表面近くでは、装置の内部と比べて音が早く伝わるんだそうです。そのために、衝突が表面で起こるか内部で起こるかで、音の波の形が違ってくるんですね。

グラフの横軸は、この音の波の形の違いを数値で表したものです。左側は、表面近くで起こった衝突、右側は、内部で起こった衝突です。ベータ線によって起こった衝突(黒)が、左側に集中しているのが分かります。


まとめると、探知機の内部で起こった、イオン化の信号が小さ目の衝突、が見つかれば、WIMPの衝突だと思われるわけです。


次回はやっと、このCDMSという実験がどういう結果を出したのか。12月に発表されたばかりの話です。

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CDMS

ダークマターの候補のWIMPという仮説上の粒子について前回書きました。

どういう装置を使って、WIMPを観測するのか。CDMSという実験の例を紹介します。(Cryogenic Dark Matter Searchの略、「低温でのダークマターサーチ」と訳しておきます)実験屋ではないので、どうも理解しきれていない部分もありますが、分かる限り。英語ですが実験サイトにも色々解説があります

今回は色々、物理の基礎みたいな話をサラッとしてるんで、その辺で分からない、知らない、というのがあればコメントで遠慮なく聞いてください。


前回話した、ニュートリノ観測装置のスーパーカミオカンデと同じ様に、CDMSの装置は地下深くに置かれています。この場合、アメリカのミネソタ州スーダンの廃坑の中です。(Soudanはアフリカの国スーダンのフランス綴り。国にちなんで名付けられたらしい…)

そしてスーパーカミオカンデと一緒で、CDMSは、装置を設置して、待つ実験です。網を張って、あとは待つだけ、という漁のようなものと思っていいです。


じゃあ、どういう網を張ったのか。

CDMSが使っているWIMP探知機は、こんな物。

ZIP detector

100gの珪素(シリコン)、または250gのゲルマニウムのブロックです。大体アイスホッケーのパックの大きさと言われてますが、それで通じるかな?手で持てるような大きさ、って事です。(写真に写っているのがどっちなのかは分かりませんでした)

まずはとにかく、WIMPがこの探知機に当たってくれる事を待ちます


もし、WIMPが探知機の中のシリコンやゲルマニウムの原子核に当たると、どうなるでしょうか?

固体のシリコンやゲルマニウムは、ダイアモンドと同じように格子状の結晶になっています。格子の中の1つの原子が衝突を受けて動き出すと、その格子に沿って振動が伝わるんですね。簡単に言ってしまうと、、です。

もう1つ起きるのは、WIMPにぶつかられた原子核が急な動きをすると、原子核の周りにある電子のいくつかは取り残されてしまいます。取り残された電子は、勝手に他の場所に行っちゃったりするわけですね。言い換えると、原子が電子を失って、プラスの電荷を持った正イオンになるイオン化するわけです。


音とイオン化、この2つの両方を観測出来るようにCDMSはデザインされてます。

まず、音を観測するためには、探知機を低温に冷やさないといけません。なぜかと言うと、固体の持つ熱は、中の原子や分子の振動だから。探知機の温度が高いと、WIMPにぶつかられなくても原子がみんな揺れてるんです。

CDMSの探知機は、絶対温度から、0.01°しか違わない温度まで冷やされています。(10mK、10ミリケルヴィンと言います)

Cryostat
↑冷却装置。どうやって働くのかは聞かないで(笑)

ここまで冷やした上で、振動を測れば、それは探知機の中の原子が動かされたんだな、と分かる事になります。1つ目の写真で、探知機の表面に細い線がいっぱい入っているのが見えますよね。これが、音のセンサーだという事です。普段は(というか、冷やしているから)超伝導体になっている部品があって、少しでも熱を与えると、超電導でなくなってしまうように調整しているそうです。この部品が超電導でなくなったら、音が起こったという事。


イオン化の方は、専門でない自分にも測り方がよく分かりました(笑)

探知機は、上と下とで電圧が違うようにしてあります。イオン化が起きて、電子が自由に動けるようになると、電子は電圧の高い方に向かいます。(物の中を電流が流れるというのはそういう事です。電子など、電荷を持った粒子が自由に動ける物は伝導体で、自由に動けなければ絶縁体になります)

というわけで、表面に電子を観測出来る装置を付けておけば、終わり。

音とイオン化が同時に起こったのが分かれば、それは装置に何かがぶつかったと分かります


衝突の観測の仕方は大まかには分かってもらえたでしょうか。

次回、その衝突のもとが、どうやってWIMPだと分かるのか、書いてみます。

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プロフィール

アシュリー

Author:アシュリー
カリフォルニア州バークリー在住、元スポーツジャンキーのアシュリーです。

今観るスポーツは、アーセナル(サッカー)とグリズリーズ(バスケ)、あとテニス。

専門の物理ネタ以外にも、色々書いていくつもりです。

Twitterをハンドル名Inoueianでやっています。

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